menu

「帰れない山」

© 2022 WILDSIDE S.R.L. – RUFUS BV – MENUETTO BV – PYRAMIDE PRODUCTIONS SAS – VISION DISTRIBUTION S.P.A.

なくした人生のパズルと、父と息子をつなぐ夏の稜線


監督・脚本:フェリックス・ヴァン・フルーニンゲン&シャルロッテ・ファンデルメールシュ
撮影:ルーベン・インペンス
配給・宣伝:セテラ・インターナショナル/宣伝協力:ポイント・セット
公開:2023年5月5日(金)新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座、シネ・リーブル池袋ほか全国公開
公式サイト:http://www.cetera.co.jp/theeightmountains/
第75回 カンヌ国際映画祭 審査員賞受賞
原作:「帰れない山」(著:パオロ・コニェッティ 訳:関口英子 新潮クレスト・ブックス)

 【ストーリー】
夏休みをアルプスの別荘で過ごす少年ピエトロ。地元の少年ブルーノとの交流は彼の世界を広げるが、父との山登りは体力的に厳しいものがあった。思春期、父と衝突したピエトロは家を出て自立を模索するも、うまく行かない。そこに届いた父の訃報。久しぶりに会ったブルーノから聞いたのは、もう一つの父の顔だった。

【みどころ】
都会の文学青年とたくましい山男の長年の絆を描いたこの作品には、人生の様々な側面が描かれている。都会と自然、富裕と貧困、虚弱と剛健、成功と失敗、経済と文学、愛と憎しみ、理想と現実。しかしそれらは同じものの異なる横顔に過ぎない。アルプスの美しい山並みも、夏は人々を癒すが雪の厳冬は命を脅かすように。
男たちの自分を貫く人生の起伏を描く一方、不和のまま逝った父の、自分への愛の痕跡を探す旅物語でもある。親子だからこそ素直になれないことは、誰もが経験すること。父が自分の不在期間、それを埋めるようにブルーノと会っていたと知ったピエトロの複雑な思いには、共感する人は多いだろう。原題の「the eight mountains」の意味があまりにも切ない。
ルーベン・インベンスのカメラが映し出す映像も見どころの一つ。レンズは雄大な自然を、時に美しく甘美に、時に過酷に映し出す。

【初出:Wife403号 2023年5月。加筆修正して更新。文/仲野マリ

 

「アイ・アム・ア・コメディアン」

「君は行き先を知らない」

関連記事

  1. 『トールキン 旅のはじまり』

    この友情と愛、死の影と希望が「指輪物語」を生んだ!監督:ドメ・カルコスキ…

  2. 「女王陛下のお気に入り」

    禁断と奔放、イングランド大奥の宮廷バトル昼と夜 監督:ヨルゴス・ランティ…

  3. 「パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト」

    音楽の革命児は「ロック・スター」だった!~本物のヴァイオリニストがセクシ…

  4. 「ヴェラは海の夢を見る」

    夫が死んでわかった「遺産は全部甥のもの」の理不尽監督:カルトリナ・ク…

  5. 「ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命…

    「檻」に入れられた人間の尊厳 監督:ニキ・カーロ原作:ダイアン・アッ…

  6. 「ジョジョ・ラビット」

    戦時下の少年は、強い軍人になりたい監督・脚本:タイカ・ワイティティ配…

  7. 「リリーのすべて」

    夫が女性になっていく・・・そのとき妻は?監督:トム・フーパー配給:東…

  8. 「スターリンの葬送狂騒曲」

    あなたは究極の“忖度”が生んだ恐怖政治を、笑い飛ばせるか?監督:アーマン…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

PAGE TOP