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「ゴジラ−1.0」

@2023 TOHO.CO.,LTD.

絶望的な悪と恐怖に人間は勝てるのか


監督:山﨑 貴
配給:東宝
公開:2023年11月4日より全国公開(ゴジラ生誕70周年記念作品)
2024年1月12日よりモノクロ版全国公開
公式サイト:https://godzilla-movie2023.toho.co.jp
*第36回東京国際映画祭クロージング作品

【ストーリー】
特攻隊の生き残り・敷島浩一(神木隆之介)は、終戦後帰京して親も家も空襲で失ったと知る。魂の抜けた敷島を救ったのは、彼同様に親を失い、それでも人の子を育てる大石典子(浜辺美波)だった。やがて敷島は海上で機雷撤去作業をする新生丸の仕事に就き、仲間もできて心も和らぐ。そんなある夏、巨大な巨大生物・ゴジラが太平洋上に出現し次々と船を襲った。日本近海で作業していた敷島たちは、他の艦隊とともに応戦するが、まったく歯が立たない。

【みどころ】
1954年、初代映画「ゴジラ」は生まれた。以来、怪獣映画の中でも「ゴジラ」は特別な存在として語り継がれ、多くのファンを持ち、何度も続編が作られ、日本だけでなくハリウッドの映画人の創作意欲さえ掻き立てて現在に至る。
シリーズ作には人間に味方するゴジラも多々登場したが、昨年11月にゴジラ生誕70周年記念作品として公開された本作は原点に立ち返り、人間の手には負えない、圧倒的な悪としてゴジラを描いている。それはまさに昭和29年、ビキニ環礁での水爆実験がもたらした恐怖そのものだ。広島・長崎に原子爆弾を落とされた唯一の被爆国として、もう絶対に起きてはならないと思ったことが、その1000倍の威力をもって再び悪夢が蘇ったとき、日本人は「ゴジラ」を作ってこの世に問うた。

核とは、人間が生み出した史上最悪の怪獣だ、ということを。

だから、ゴジラとの戦いに勝機はない。生活のすべてがアナログだった戦後昭和の人間が、一体どうすればこのような大怪獣に勝てるというのだろう。その絶望感が、画面いっぱいに現れる。映画だとわかっていながら、「この戦いに終わりはあるのか?」「人間は生き残れるのか?」と胸騒ぎがおさまらない。

筆者は1958年生まれである。これまでの「ゴジラ」作品を見てきてある時から非常な「違和感」を覚え始めた。それは、「ゴジラが好き」という俳優たちが、我も我もと出演を希望したあたりからである。そして時を同じくして、ゴジラは人間の味方となった。あるいは、公平な裁きを人間に与える神として描かれ始める。本作はそんな「違和感」の根源が、ゴジラ誕生の原点をないがしろにしたストーリー作りやキャラクター設定に起因する、ということを、確認させてくれた映画でもあった。

一方で、これは「人間の」物語である。大きな戦争を体験し、多くの人が家族や友人を失った。自分だけが生き残った理由がわからない。なぜ自分だけが? 皆、そこに罪悪感を感じ、「生きる意味」を探していた。
敷島は、特攻の生き残りといっても、故障を理由に故意に戦いを避けたという重荷を負う。人から軽蔑もされる。それでも、生きていれば、素晴らしい未来が待っている。その未来を作るのは、仲間である。

国中が焦土と化し、戦後は「ゼロからの出発」であった時に、さらに追い討ちをかける「ゴジラ」の襲来。未来を奪われる絶望の中、人々が必死で紡ぐ一筋の光、生きることを諦めない道が清々しい。

2023年の第36回東京国際映画祭のクロージング作品としてふさわしい力作である。
山崎監督は「三丁目の夕日」に通じる昭和の風景の緻密な再現にCGを駆使しながらも、アナログ的な匂いをしっかり残した。
もし第一作を作った時代にカラーフィルムがあり、高度な撮影機器や技術があれば、このように作っただろうと思わせた。

【追記】
2024年1月より、モノクロ版が上映されます。モノクロであることによってさらにゴジラの恐ろしさが際立つこと間違いなし。
連動するWife403号(2024年2月初旬発行)にも「ゴジラ-1.0」についての記事が掲載されます。

【文/仲野マリ

 

「ロスト・キング 500年越しの運命」

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