木こりオヤジ、ゾンビ映画に出る
監督:沖田修一
配給:角川映画
公開:2012年2月11日より全国ロードショー
東京国際映画祭イベントレポートサイト:https://2018.tiff-jp.net/news/ja/?p=50150
第24回東京国際映画祭で審査員特別賞を受賞した名作が、今年も同映画祭(第31回)で上映。「Japan Now」の一貫「映画俳優 役所広司」で、出演作の1つとして取り上げられた。10月26日に行われたティーチインの模様は上記映画祭公式イベントレポートサイト参照。
【ストーリー】
一徹な木こりの克彦(役所広司)は妻が死んでこのかた仕事に励むが、息子(高良健吾)とは喧嘩が絶えず、息子は家を出てしまう。そんなとき、ゾンビ映画の撮影隊が村へやってきた。道案内を発端に、無理やりロケを手伝わされる羽目になった克彦は、「使えない」若いスタッフ達とりわけ気弱で煮え切らない新米監督・幸一(小栗旬)が、歯がゆくてたまらない。だが脚本を読んでその世界観に感心、村人も巻き込んで映画作りに協力し、職業や年齢を飛び越えて幸一を評価する。ところが、当の幸一はロケの映像第一弾を見て絶望。すべてを投げ出し逃げるため、最終電車へ乗ろうと駅へ急ぐのだった。
【みどころ】
経験あり体力あり、声の大きい昭和人間・克彦に、独り言を小声で呟くばかりの草食系オタク平成男子・幸一はたじたじだ。しかしそこから「自分」のこだわりを人に伝えるために必要な自信と胆力を学んでいく。
一方克彦も若者と交流することで、言葉少ない息子の心のありように気づかされていく。それぞれ自分の世界に凝り固まっていた克彦と幸一が、新しい世界に触れて変容していく様子を、役所と小栗が絶妙の間合いで表現、思わず笑ったり、胸が熱くなったり。村の自然や昔からの知恵、人々の素朴さを讃えつつも、「映画作り」という突然の刺激が村人に「張り」を与え、平板な村の生活がどんどん活性化していくところにリアリティがある。ほのぼのとした笑いと達成感が心地よい。
【初出:Wife354号 2012年2月 文/仲野マリ】
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