「箱」

第34回東京国際映画祭ワールドフォーカス部門参加作品。 第78回ヴェネチア映画祭コンペティション参加作品。

使う側になるか使われる側になるか? 少年が見たそれぞれの地獄


監督:ロレンス・ビガス
制作:アメリカ/メキシコ
第34回東京国際映画祭ワールドフォーカス部門参加
第78回ヴェネチア映画祭コンペティション参加作品。
公式サイト:https://2021.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3404WFC01

 【ストーリー】
父親が死んだという知らせを受け、祖母の代わりに遺体を引き取るために旅に出た少年。遺骨が入っているという「箱」を持たされての帰り、少年はバスの車窓からある男を見かける。
「お父さんだ!」
少年はバスから飛び降り、男についていくが、男は「お前なんか知らない」と突っぱねる。それでも少年は男から離れようとしない。「箱」に入った遺体は別人のものであり、「あなたこそ父親」と言い張って譲らないのだ。根負けした男は少年に自分の仕事を手伝わせる。男は工場で働きたい人々をリクルートし労働者として送り込む「口入れ屋」だった。読み書きのできる少年は、男の片腕として戦力になった。しかし工場で見かけた少女の「死」をめぐり、少年は男に不信感を抱き始める。

【みどころ】
考えさせられる作品だ。最初は、父親でもない赤の他人の自分を「父」と言い張る少年に対し、男が徐々に「父親らしい」感情を持ち始めるところに希望を感じる。厳しい貧困の中、少年の本当の父親は、おそらく出稼ぎの最中に死んでしまった。その現実を、息子は受け入れられずにいる。「こんなふうに強くて頼りがいがあって稼げる人がお父さんであったなら」……そんなふうに夢と現実が混ざり合う生活の中で、少年は恋をする。彼女は「労働条件が言われたものと違う」とクレームをつけたことで、殺されてしまうのだ。いわば、メキシコ版「女工哀史」である。そして少年自身も、深い奈落に落とされていく。
犯罪に手を染めなければ生きていけない世界。殺される者だけでなく、殺す者にとってもそこは地獄。メキシコの闇は深い。【初出:Wife398号 2022年2月。「女性が『境界』を越えるとき」から抽出し、、加筆の上公開 文/仲野マリ

 

「母の聖戦」(原題「市民」)

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