「名もなき生涯」

©2019 Twentieth Century Fox Film Corporation

農夫の良心を踏みにじるのはナチか?隣人の同調圧力か?

監督・脚本:テレンス・マリック
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
公開:2月21日(金)より全国公開
公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/namonaki-shogai/

【ストーリー】
オーストリアの農夫フランツ(アウグスト・ディール)は、美しい天空の村で日々農業に勤しんでいた。家族は愛妻ファニ(ヴァレリー・パフナー)と、3人の幼い娘たち。だが祖国はナチスドイツに併合され、やがてフランツにもドイツ軍の召集令状が届く。軍事訓練には応召したフランツだったが、ナチ占領下、ドイツ軍の一員として戦地に赴くことに疑問をもち、「罪のない人を殺すために兵士にはなれない」と良心的兵役拒否を宣言する。困った町の顔役らが次々にフランツを説得に訪れる。それでも決意はゆるがない。追い詰められていくのはフランツだけではない。ファニや娘たちも村八分状態になり、戦時下の暮らしは一気に困窮していく。

【みどころ】
これは実話である。「人を殺したくない」ただそれだけを叶えるのが、こんなに難しいのはなぜだろう。事は軍隊の強制力のみにとどまらない。代わる代わる隣人がやってきて「行かないのはお前だけだ」「親戚も肩身が狭い。自分勝手はやめろ」「お前一人で世界を変えられると思っているのか?」と意見される。「敵より始末に終えない裏切り者」と後ろ指を指す隣人たちの、じわじわと強まる同調圧力には震撼とする。もしあなたの夫が、兄が、父が、友が、「兵役を拒否する」と言ったらあなたはどうするだろう。戦前の日本でも「良心的兵役拒否」は認められず、単なる兵役逃れとして重罪に処せられ、家族への影響も大きかった。フランツの折れない心にも驚嘆するが、夫が選んだ道を支えようとする妻ファニの、神に祈り黙々と農作業をこなす強靭な精神にも感服する。今なぜこの夫婦の生涯が取り上げられるのか、その意味をじっくりと考えたい。

【文/仲野マリ】(初出:「Wife390号」に加筆修正)

「ジョジョ・ラビット」

「海辺の映画館 キネマの玉手箱」

関連記事

  1. 「君の名前で僕を呼んで」

    避暑地の夏、本当の恋を見つけた息子へ監督:ルカ・グァダニーノ 配給: ファントム・フィルム…

  2. 「イヴ・サンローラン」

    天才が繰り出す革新的ファッションの光と影監督:ジャリル・レスペール脚本・脚色:マリー=ピエー…

  3. 「プロミスト・ランド」

    シェールガス試掘権に揺れるカントリーサイド農家の誇りと不安をえぐるマットデイモンの問題作監督…

  4. 「剣の舞〜我が心の旋律〜」

    ハチャトゥリアンが「剣」に込めた、初恋と望郷と音楽への情熱監督・脚本:ユスプ・ラジコフ配給:…

  5. 「パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト」

    音楽の革命児は「ロック・スター」だった!~本物のヴァイオリニストがセクシー&パワフルに熱演~…

  6. 「ホワイト・クロウ 伝説のダンサー」

    亡命を決意したバレエのレジェンド、その若き日の焦燥と野望監督:レイフ・ファインズ配給:キノフ…

  7. 「幸せのありか」

    僕の幸せは、僕だけが決められる!監督・脚本:マチェイ・ピェブシツア配給:アルシネテラン封…

  8. 「ラブ&マーシー 終わらないメロディー」

    心を病んだ天才ミュージシャンの20年後監督ビル・ポーラッド配給:KADOKAWA封切…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

最近の映画レビュー

PAGE TOP