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「ジョジョ・ラビット」

©2019 Twentieth Century Fox Film Corporation &TSG Entertainment Finance LLC

戦時下の少年は、強い軍人になりたい

監督・脚本:タイカ・ワイティティ
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
公開:1月17日(金)より全国公開
公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/jojorabbit/

【ストーリー】
ジョジョ(ローマン・グリフィン・デイビス)は10歳のドイツ少年。男の子なら誰でもが憧れる、強くてカッコいい兵隊さんになるのが夢だ。ちょっと緊張するけど、心の中のアドルフ・ヒットラーおじさん(タイカ・ワイティティ)が、いつもそばでニコニコ、励ましてくれる。今日から青少年集団ヒトラーユーゲントの合宿。絶対に頑張るぞ!と友達のヨーキー(アーチー・イェイツ)と意気込んで参加するが、初日から大失敗。「怖がりウサギのジョジョ、ジョジョ・ラビット!」と囃し立てられてしまう。ジョジョがいじめられるのには、もう一つわけがあった。軍隊に行ったはずのお父さんの居場所がわからないのだ。留守を守るお母さん(スカーレット・ヨハンソン)は、そんなことどこ吹く風。「ダンスしましょう」とジョジョと一緒に街を歩きまわる。そんなある日、ジョジョは家の中で知らない女の子と遭遇。壁の中に潜んでいるユダヤ人と知って、ジョジョは混乱する。
なぜ家の中にユダヤ人? 僕は通報すべきなのか? このこと、お母さんは知ってるの?

【みどころ】
戦争は悪いこと。戦争映画はそこから始まるものが多い。でもこの映画は、ドイツの少年ジョジョの目を通して見た戦争の狂気だ。ヒットラーを熱狂的に迎える群衆のニュース映像にビートルズの音楽をかぶせるオープニングは秀逸。ジョジョの心の中にもかっこいい「ヒットラー」がいて、軍国少年は疑うことを知らない。しかし家の壁の裏にユダヤ少女が匿われていることを知って、ジョジョの中の「ヒットラー」が少しずつ形を変えていく。ジョジョが「疑問」を持つと同時に、「わが心のヒットラー」が形相を変化させていくくだりは、「愛国心」が政権に利用され、甘言がやがて支配に変わっていく恐ろしさの擬人化とも言える。そうなってからでは遅い。抵抗できない。人々は流されていく。
そんな中で、本当に正しいことは何なのか、信念を守り通すジョジョの母親と、戦争の恐ろしさを知らないうちに戦争に巻き込まれていく少年たちに責任を持とうとする大尉(サム・ロックウェル)の姿勢に心が熱くなる。本当にかっこいい大人とは?を描いた映画でもある。
ドイツ同様敗戦した日本人には、空襲後の街並みなど他人事には思えないエピソードも多い。ドイツでも戦中派金属供出などをやっていたとは。また、敗戦によって手のひらを返すように言を左右する大人たちに、戦中彼らを信じて国に全てを捧げてきた青少年たちが虚無感を覚えたのも一緒だ。当時の軍国少年・少女たちが、「ジョジョは私だ」と思うことだろう。

【文/仲野マリ

 

「リチャード・ジュエル」

「名もなき生涯」

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