たくましき江戸の女たちが縁切寺に賭ける第二の人生
監督:原田眞人
配給:松竹
封切 :5月16日(土)より全国順次公開
公式サイト :http://kakekomi-movie.jp/
【ストーリー】
天保12年。時代は水野忠邦の「天保の改革」により質素倹約がよしとされ、芝や戯作本など娯楽への取締も強くなっていた。医者の卵でありながら戯作者も志す中村信次郎(大泉洋)は、住みにくくなった江戸を離れ、鎌倉・東慶寺の門前にある親戚の家・柏屋に身を寄せる。東慶寺は、女性から離縁できなかった江戸時代、駆込んで2年寺に籠れば女性からでも離縁ができる寺として有名で、柏屋は駆込んだ女性たちの事情を聞くための御用宿、いわば離婚調停人の役割をする場所だった。信次郎は御用宿での聞き取りを手伝うようになる。そこへ駆け込んできたじょご(戸田恵梨香)とお吟(満島ひかり)。夫(武田真二)の浮気とDVで心を閉ざすじょごは、源次郎のやさしさに触れ、少しずつ心を開いていく。一方お吟は、豪商堀切屋(堤真一)の囲われ者で、何不自由なく暮らしていたのに駆け込んでくる。「愛されすぎて身がもたない」というのがその理由だが、実はお吟にも、夫の堀切屋にも、互いに言えない秘密があった。
【みどころ】
原作は井上ひさしの「東慶寺花だより」。駆込んできた女性一人一人の人生と行く末を描く短編から成る。最近では市川染五郎主演で歌舞伎でも上演された。単に「哀れな女性が最後の救いを求める」というだけにとどまらず、自分らしく生きようと決断し、新しい人生を選択する女性たちの逞しさや、彼女たちを温かく見守る周囲の人々の庶民ならではの知恵の集積が小気味よい。そこに井上ひさしらしい笑いと人間の生活力を信じる優しいまなざしを感じる。時代劇初挑戦の原田眞人監督は、黒澤明作品を初めとする日本の時代劇映画に連なろうと、江戸風物と色彩にこだわって丁寧な映像作りに徹した。本格的な作風は、時代劇ファンにはうれしい限りだ。細部にこだわる井上ひさしワールド構築にもつながっている。一方で、時代劇馴れしない精神が現代人にもわかりやすい人物描写を生み、アクションありロマンスあり笑いありの展開の早さで2時間半という長尺をちっとも感じさせない。この映画をきっかけとして時代劇に興味を持つ人も増えるのではないだろうか。
【初出:仲野マリの気ままにシネマナビonline 2015年4月14日(再収録に際し加筆修正)】
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