「HOKUSAI」

©️2020 HOUSAI MOVIE(2020年第33回東京国際映画祭クロージング作品)

プライドも常識も打ち破れ!
UKIYOEを芸術にした男たちの気概

監督:橋本 一
配給:S・D・P
公開:2021年5月
公式サイト:https://www.hokusai2020.com
2020年第33回東京国際映画祭クロージング作品

【あらすじ】
若き北斎(柳楽優弥)は、自分の画力を信じながらもなかなか売れない現状に忸怩たる思いでいた。ある日、今をときめく浮世絵版元・蔦屋重三郎(阿部寛)が彼に興味を示し、チャンスを与えるが、収めた作品は蔦屋の満足いくものではなかった。蔦屋は独りよがりな作風から脱皮させようとお抱えの人気作家・喜多川歌麿(玉木宏)の仕事ぶりを見せるも、北斎は自分のやり方に固執する。自分の描きたいものは何なのか? 彼は江戸を離れ、スケッチの旅に出る。そこで出会ったのは、壮大な海の風景だった。

【みどころ】
江戸時代の浮世絵は、フランスの印象派に多大な影響を与えるなど、世界的に評価されている。絵画の構成やアングルもさることながら、同時代、まだ絵画が上流社会のための一点ものでしかなかった欧米にとって、安価で手に入れられる多色刷りの版画は、驚愕かつ奇跡の「庶民のアート」なのである。
この映画は葛飾北斎という一人の浮世絵師の生涯を描きつつ、実は名うての版元であり剛腕アート・プロデューサー蔦屋重三郎を追った物語ともいえる。18世紀後半の江戸に花開いた浮世絵文化だったが、寛政の改革で華美なものや遊びがご法度に。そんな中でもエンターテインメントとアートを守ろうとした彼のパトロン魂が、いかにラディカルだったか。文化はいつの時代も革命的であり、世の中の常識の中に止まらない。自分の美意識を命懸けで守る蔦屋を、阿部寛が好演。玉木宏も、吉原の一室で酒を女を抱きながらその目は冷徹に光る歌麿に扮し、一分の隙も見せない緊張感を醸した。
北斎の青年期を担った柳楽優弥は、アーティストの「自分探し」の苦悩と焦燥にリアリティがあり、後半、晩年の北斎に扮した田中泯は飄々として、「芸術は爆発だ!」の岡本太郎を彷彿とさせる芸術家魂が見える。
欲を言えば、「波」に出会った駆け出しの青年北斎が、どのようなプロセスを経て「先生」と呼ばれるほどの成長を遂げたのか、その辺りを中盤で描いてもらえれば、さらに感慨深いものとなったかもしれない。

本作品は、第33回東京国際映画祭で、クロージング映画として先行公開された。

[2020.11.09] HOKUSAI (SA) Hokusai (SA)
©️2020 TIFF

(文/仲野マリ

 

「家庭裁判所 第3H法廷」

「トゥルーノース」

関連記事

  1. 「サンブンノイチ」

    「這い上がりたい男たち」の一発逆転は成功するか?監督: 品川ヒロシ配給: KADOKAWA …

  2. 「椿の庭」

    彼女が守りたかったのは、庭か、家族か、思い出か監督・脚本・撮影:上田義彦配給:ビターズ・…

  3. 「関ヶ原」

    天下分け目の6時間が戦争の緊張と理不尽をあぶり出す 監督・脚本:原田眞人原作:司馬遼太郎…

  4. 「水曜が消えた」

    火曜日しか生きられない男が知った「水曜日は蜜の味」 監督・脚本・VFX:吉野耕平配給:日活…

  5. 「焼肉ドラゴン」

    ”昭和の在日”を生き抜く! そのエネルギーと希望脚本・監督:鄭 義信配給:KADOKAWA …

  6. 「ギャングース」

    “普通の生活”を夢見る被虐児たち 命がけの「タタキ」がもたらす未来は監督:入江悠 原作:「ギャン…

  7. 「北の桜守」

    いつか満月の夜に桜を見よう! 家族の約束は生きる希望となる監督:滝田洋二郎舞台演出:ケラリー…

  8. 「イン・ザ・ヒーロー」

    アクション大好き人間に贈るスーツアクターの夢と現実監督:武 正晴脚本:水野敬也 李 鳳宇…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

最近の映画レビュー

PAGE TOP