「HOKUSAI」

©️2020 HOUSAI MOVIE(2020年第33回東京国際映画祭クロージング作品)

プライドも常識も打ち破れ!
UKIYOEを芸術にした男たちの気概

監督:橋本 一
配給:S・D・P
公開:2021年5月28日より全国ロードショー
公式サイト:https://www.hokusai2020.com
2020年第33回東京国際映画祭クロージング作品

【あらすじ】
若き北斎(柳楽優弥)は、自分の画力を信じながらもなかなか売れない現状に忸怩たる思いでいた。ある日、今をときめく浮世絵版元・蔦屋重三郎(阿部寛)が彼に興味を示し、チャンスを与えるが、収めた作品は蔦屋の満足いくものではなかった。蔦屋は独りよがりな作風から脱皮させようとお抱えの人気作家・喜多川歌麿(玉木宏)の仕事ぶりを見せるも、北斎は自分のやり方に固執する。自分の描きたいものは何なのか? 彼は江戸を離れ、スケッチの旅に出る。そこで出会ったのは、壮大な海の風景だった。

【みどころ】
江戸時代の浮世絵は、フランスの印象派に多大な影響を与えるなど、世界的に評価されている。絵画の構成やアングルもさることながら、同時代、まだ絵画が上流社会のための一点ものでしかなかった欧米にとって、安価で手に入れられる多色刷りの版画は、驚愕かつ奇跡の「庶民のアート」なのである。
この映画は葛飾北斎という一人の浮世絵師の生涯を描きつつ、実は名うての版元であり剛腕アート・プロデューサー蔦屋重三郎を追った物語ともいえる。18世紀後半の江戸に花開いた浮世絵文化だったが、寛政の改革で華美なものや遊びがご法度に。そんな中でもエンターテインメントとアートを守ろうとした彼のパトロン魂が、いかにラディカルだったか。文化はいつの時代も革命的であり、世の中の常識の中に止まらない。自分の美意識を命懸けで守る蔦屋を、阿部寛が好演。玉木宏も、吉原の一室で酒を女を抱きながらその目は冷徹に光る歌麿に扮し、一分の隙も見せない緊張感を醸した。
北斎の青年期を担った柳楽優弥は、アーティストの「自分探し」の苦悩と焦燥にリアリティがあり、後半、晩年の北斎に扮した田中泯は飄々として、「芸術は爆発だ!」の岡本太郎を彷彿とさせる芸術家魂が見える。
欲を言えば、「波」に出会った駆け出しの青年北斎が、どのようなプロセスを経て「先生」と呼ばれるほどの成長を遂げたのか、その辺りを中盤で描いてもらえれば、さらに感慨深いものとなったかもしれない。

本作品は、第33回東京国際映画祭で、クロージング映画として先行公開された。

[2020.11.09] HOKUSAI (SA) Hokusai (SA)
©️2020 TIFF

【コロナ禍に思う】
5月公開はこの時点で決まっていたことだけれど、新型コロナの感染は半年たってさらに拡大。緊急事態宣言によって、まだ映画館に自粛勧告が出ているとは思いもしなかっただろう。幸い、6月1日からは映画館への勧告は緩和される模様。「エンタメは不用不急」と言われる今この時に、この映画を観ると、蔦屋のラディカルさがさらに浮き彫りとなるだろう。(2021年5月24日追記)

(文/仲野マリ

 

「家庭裁判所 第3H法廷」

「トゥルーノース」

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