刑事と暴力団の歪な関係に隠された秘やかな正義
監督:白石和彌
原作:柚月裕子
配給:東映(R15指定)
公開:2018年5月12日、丸の内TOEIほか全国順次公開
公式HP:http://www.korou.jp
【ストーリー】
昭和63年、広島の呉原東署刑事二課に新人の日岡秀一(松坂桃李)が配属された。日岡は、ヤクザとの癒着を噂される大上省吾(役所広司)と共に、暴力団系列の金融会社社員失踪事件を担当する。所轄管内には敵対する2つの暴力団がある。非常に緊迫した状況が続いており、失踪した社員も対立する暴力団員に殺された可能性が浮上した。大上は事件関係者に対し、拷問など手荒な捜査を開始する。違法捜査も辞さない大上に日岡は驚く。同僚の刑事たちがそれを黙認しているのも気になった。が、そんな日岡も、上層部から極秘の使命を帯びていた。やがて、社員失踪事件に絡む暴力団の報復合戦が勃発。時を同じくして大上が行方不明になる。
【みどころ】
暴力団に彼らなりの仁義や厳しい掟があることを飲み込んで、懐に入り込む大上。容疑者に対しては、「警察じゃけ、何をしてもええんじゃ」と、恐喝や暴力を繰り返す。捜査のためとはいえ、これでは刑事の衣を着たヤクザとレッテルを貼られても仕方がないだろう。が、一方では社会的弱者には温かな笑顔を見せ「ガミさん」と親しまれている。こんな大上を役所が熱演し、飄々として憎めない刑事に仕上げていた。
「孤狼」とは悪意を持つズルい人という意味。刑事でありながら暴力団と密な関係を持つ大上のことだが、誰に対しての「孤狼」なのだろう。保身重視の警察上層部は、大上の所業を見て見ぬ振り。暴力団の仁義に共感を持つ大上と、暴力団排斥を掲げる上層部との対立をもう少し詳しく描いても良かったのではないか。そうすれば、大上の生き方がクローズアップされ、タイトルの意味がもっと生きてくるに違いない。
新米刑事日岡は松坂が好演。警察組織は大上をなぜ野放しにしているのか、最初は納得できない日岡だが、次第に大上流の正義を理解する。癒し系キャラのボンボン刑事だった日岡の顔つきが、野性の血が覚醒するように変わっていくのが見ものである。
【文/星野しげみ】
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