国境へ! 全人生を賭けた子離れの旅
監督・脚本・製作:パナー・パナヒ
提供・配給:フラッグ
後援:イラン・イスラム共和国大使館イラン文化センター
公開:2023年8月25日(金)新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー
公式サイト:https://www.flag-pictures.co.jp/hittheroad-movie/
【ストーリー】
1台のレンタカーが、4人家族と1匹の老犬を乗せ、イラン高原を貫く高速道路を走っていた。運転するのは寡黙な青年、助手席には思いつめた様子の母。しかし後部座席では、足にギプスをはめた父親が冗談を言い、異常にテンションの高い幼い弟がはしゃいでいる。母が後ろの車を気にし出した。「つけられてない?」彼らが目指すのは国境。息子を秘密裏に出国させるため、ブローカーの指示に従って動いていたのだ。
【みどころ】
全てを犠牲にして子を外国に送り出す親世代と、全てを捨てて外国に活路を見出す子世代の物語。世代ごとの人生観の断絶も垣間見え、究極の「親離れ・子離れ」がここにある。
信用していいかどうか、甚だ懐疑的なブローカーの言いなりになって、彼らは金を用立て、指定された場所へと急ぐ。不安をかき消すように「最後の旅」を一緒に楽しむ4人。その泣き笑いが切ない。一見たわいもない日常会話の中に、家族の愛が見える。独り脱出する男も、送り出す両親も、不安でたまらないのだ。幼い弟のハイテンションは、何かを悟っている証拠である。
日本の歌謡曲に似た情熱的な古いイランの歌が、「魂の自由」を感じさせて心に残る。
【初出:Wife404号 2023年8月。加筆修正して更新。文/仲野マリ】
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