「スパイの妻」

©️2020 NHK,NEP,Incline,C&I

戦時下で、もし家族が国を裏切ろうとしていたら

監督:黒沢 清
配給:ビターズエンド
公開:10月16日(金)よりロードショー
公式サイト:https://wos.bitters.co.jp

【ストーリー】
1940年、聡子(蒼井優)は貿易商の優作(高橋一生)とともに豪邸に住み、戦時色が強まる中でも何不自由ない生活を送っていた。昔馴染みで今は憲兵となった津森(東出昌大)は、時勢を気にしない優作の態度を憂慮し忠告しにやってくるが、優作は「私はコスモポリタン」とうそぶき、飄々としている。しかし中国・満洲出張から帰ってきた頃から、優作の様子がおかしい。「君は何も知らなくていい」という言葉に不審を募らせた聡子はついに秘密に辿り着き、津森(東出昌大)のもとへと向かう。

【みどころ】
妻の聡子には政治的信念がない。ひたすら「幸せに暮らしたい」だけなのだ。だが夫の振る舞いは日常を脅かす。少しでも国に反抗すれば生きていけない時代である。生活を守るべきか、夫に協力すべきか。ノンポリだからこそ、聡子は揺れる。憲兵を演じる東出の、一直線で不気味な演技が秀逸だ。
伏線を次々と回収する手練手管は「お見事」。手に汗握る心理ミステリーだ。すでに80年前になろうという日中戦争、太平洋戦争の中で行われていた母国の恥部と真っ向から対峙しようとする主人公の「コスモポリタン」精神を追っており、ヴェネチア国際映画祭での監督賞受賞もうなずける。
21世紀の今、「男は政治、女は生活」みたいな描き方をそのまま受け入れてよいか、多少の疑問は残るが、黒沢監督は「時代劇のつもりで作った」というから、そこは時代劇の限界としておくとして、「愛」が全てを凌駕するクライマックスを見ると、男であれ女であれ、人はポリシーだけでは生きられないというのが重要なメッセージだとわかる。
(文/仲野マリ

 

 

 

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