ワンオペ育児の救世主は不思議なベビーシッター
監督:ジェイソン・ライトマン
脚本:ディアブロ・コディ
配給:キノフィルムズ
公開:2018年8月17日、TOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー
公式HP:http://tully.jp
【ストーリー】
間もなく3人目の子どもが生まれるマーロ(シャーリーズ・セロン)。夫のドリュー(ロン・リヴィングストン)は優しいが、家事や育児はマーロに任せっきり。2人の子どものうち息子のジョナは情緒不安定で手がかかり、小学校から度々呼び出しがあるため精神的に余裕のない日々を送っている。やがて無事に女の子・ミアを出産したマーロは、兄のクレイグ(マーク・デュプラス)から、出産祝いに夜間専門のベビーシッターを提案される。最初は断ったマーロだが、日々の疲れが限界に達してついにベビーシッターを依頼。やって来たのはタリ―(マッケンジー・デイヴィス)と名乗るイマドキで不思議な女の子だった。やがてマーロはタリ―のおかげでリラックスできるようになり、前向きに生活し始める。年の離れた2人に友情が芽生えた頃、タリ―はマーロに思いがけない提案をする。
【みどころ】
『JUNO/ジュノ』『ヤング≒アダルト』の監督・脚本コンビが再びシャーリーズ・セロンとタッグを組み、出産や子育ての問題に直面する女性の姿を描いた人間ドラマ。主演のシャーリーズ・セロンは20キロ近く増量し、3人の子育てに頑張り過ぎて疲れ切った40代の母親を熱演している。前半は子育てや産後の辛い部分、夫とのコミュニケーション不足の関係がクローズアップされ、マーロの姿は観ていて息苦しくなってくるほどリアル。睡眠時間もなく授乳して、オムツを替え、泣く子を抱っこしてあやし、上の子たちを小学校へ送迎するが、一人は問題児で何事もスムーズにいかない。夫は家事育児にノータッチで昼間はひたすら眠く、食事や掃除、洗濯はだんだん手抜きになって部屋は荒れ……。もちろん、子どもは幸せもたくさん運んできてくれるはずなのだが、そのリアルさゆえに何事にも頑張り過ぎてしまう女性は共感するところがたくさんあるのでは。後半、シッターのタリ―が登場してからはトーンが明るくなり、そして少しミステリアスな要素も加わる。親になり、中年女性になるということは、タリ―のように若くて奔放ではいられなくなるということ。その現実をかみしめながらも、家族の大切さに気づかせてくれるほろ苦い「秘密の時間」だった。
【文/富田夏子】
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