なくした人生のパズルと、父と息子をつなぐ夏の稜線
監督・脚本:フェリックス・ヴァン・フルーニンゲン&シャルロッテ・ファンデルメールシュ
撮影:ルーベン・インペンス
配給・宣伝:セテラ・インターナショナル/宣伝協力:ポイント・セット
公開:2023年5月5日(金)新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座、シネ・リーブル池袋ほか全国公開
公式サイト:http://www.cetera.co.jp/theeightmountains/
第75回 カンヌ国際映画祭 審査員賞受賞
原作:「帰れない山」(著:パオロ・コニェッティ 訳:関口英子 新潮クレスト・ブックス)
【ストーリー】
夏休みをアルプスの別荘で過ごす少年ピエトロ。地元の少年ブルーノとの交流は彼の世界を広げるが、父との山登りは体力的に厳しいものがあった。思春期、父と衝突したピエトロは家を出て自立を模索するも、うまく行かない。そこに届いた父の訃報。久しぶりに会ったブルーノから聞いたのは、もう一つの父の顔だった。
【みどころ】
都会の文学青年とたくましい山男の長年の絆を描いたこの作品には、人生の様々な側面が描かれている。都会と自然、富裕と貧困、虚弱と剛健、成功と失敗、経済と文学、愛と憎しみ、理想と現実。しかしそれらは同じものの異なる横顔に過ぎない。アルプスの美しい山並みも、夏は人々を癒すが雪の厳冬は命を脅かすように。
男たちの自分を貫く人生の起伏を描く一方、不和のまま逝った父の、自分への愛の痕跡を探す旅物語でもある。親子だからこそ素直になれないことは、誰もが経験すること。父が自分の不在期間、それを埋めるようにブルーノと会っていたと知ったピエトロの複雑な思いには、共感する人は多いだろう。原題の「the eight mountains」の意味があまりにも切ない。
ルーベン・インベンスのカメラが映し出す映像も見どころの一つ。レンズは雄大な自然を、時に美しく甘美に、時に過酷に映し出す。
【初出:Wife403号 2023年5月。加筆修正して更新。文/仲野マリ】
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