まだ見ぬ親へのあこがれと現実
監督:ウニー・ルコント
配給:クレスト・インターナショナル
公開:7月30より岩波ホールにて公開
公式サイト:http://crest-inter.co.jp/meguriauhi/
【ストーリー】
理学療法士のエリザは、自分を養子に出した生みの親の情報を得るため、パリに夫を残したまま息子ノエを連れて港町ダンケルクに引っ越す。だが実母が匿名を望んでいるために調査は中断、エリザは焦燥にかられるのだった。そんなとき、ノエの学校で働く中年女性アネットが肩を痛めエリザのもとにやってくる。治療を受けるうちに打ち解けていく二人。ある日アネットは、ノエがアラブ人と親しくするのはよくないと忠告する。
【みどころ】
監督のウニー・ルコントは韓国に生まれ、養女としてフランスに渡った。その実体験をもとにつくられた監督第一作『冬の小鳥』に続き、本作も、実の親と切り離された子どもの不安定な心理を突き詰めていく。養子先でいかに幸福をつかんだとしても、そのことと生みの親を知らない虚しさとは別のものだ。コンプレックスとなっていたノエの「髪の毛」も、それが「血だ」とわかれば大きな幹につながる安心感へと変わっていく不思議。子を手放さなくてはならなかった親側の事情・心情も描き、単なる「捨て子の恨み節」に終始しないのが潔い。
【初出・Wife376号 2016年8月 文/仲野マリ】
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