『カメラを止めるな!』

第31回東京国際映画祭にも登場、日本アカデミー賞6部門受賞の話題作が、3/8(金)ついにTV地上波初放送

ゾンビ撮りがゾンビに!?廃墟の中でカメラが捉えたものは…?

監督・脚本・編集:上田慎一郎
製作:ENBUゼミナール
配給:アスミック・エース=ENBUゼミナール
公式サイト:http://kametome.net

【あらすじ】
ゾンビものの自主製作映画の撮影をするため、かつて人体実験が行われたという噂のある山奥の廃墟に訪れた撮影隊。監督(濱津隆之)は、ヒロイン役の女優(真魚)にリアルな恐怖の演技を求め、なかなか撮影にOKを出さず、俳優たちは疲労していった。そんな時、本物のゾンビが撮影隊の前に出現! 彼らは次々とゾンビに襲われ、1人、また1人とゾンビ化していく。逃げ回る俳優たちの姿を見て、監督は本物の恐怖の表情を撮影できる喜びに狂喜し、カメラを回し続けるのだった。

【みどころ】
低予算映画ながら、口コミで話題を集め2018年を代表する映画となった本作。前半の布石を終盤にかけて一気に回収していく展開は、90分弱という短めの尺を活かして、最後までスピード感を保ったまま疾走する。第31回東京国際映画祭Japan Nowでも上映、第42回日本アカデミー賞では8部門を受賞、最優秀編集賞と話題賞(作品部門)も獲得した。物語の好みは十人十色だが、テーマパークの絶叫型アトラクションにも似て、体験的な面白さという第二の評価軸によって“おもしろさ”の間口が広がったことが、普段映画を見ない層を巻き込んだヒットにつながった要因ではないかと思う。正直なところ、前半は“何これ?”と首をかしげるような要素も多い。上田監督が本作のTV初放映の番宣CMで、「途中で“何これ”と思ってもチャンネルを変えないで」と言っているくらいである。しかし本作の魅力は、何と言っても物語中盤からの作品の舞台裏を明かすという展開。ゾンビ映画かと思いきや、撮影の裏側を描く手法は、老若男女に驚きを与えた。

ただ、この映画のポスターを観て、本格ゾンビ映画を期待した人たちにとってはどうだろう。劇中劇として描かれるゾンビ作品は、“ゾンビ専門チャンネルが作る今までにないゾンビ作品”という設定ながら、これに携わる制作会社やスタッフ側にこだわりや情熱を感じさせる描写はなく、逆にやっつけで作っているような印象さえ覚える。作品全体として「ゾンビ」というモチーフが、ただの物語の装置でしかなく、軽視されている感じが否めない。『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』など、名作を産んだジョージ・A・ロメロ監督から始まったゾンビ映画は、熱狂的なファンを生み、いろいろな監督によって繰り返し描かれてきた。ゾンビは生きているのか死んでいるのかあいまいな存在であることから、映画には必然的に作者の生死観などが現れる。ゾンビ映画を装うのであれば、前半部分でもう少しゾンビに対するこだわりや、深い思想を垣間見せても良かったように思う。

忘れてならないのが、ロケの舞台となった廃墟・茨城県の芦山浄水場だ。昭和初期に建てられた今は使われていない建物で、“人体実験の噂のある施設”などとして、いろいろな作品でダークな雰囲気の撮影に使われている。うっそうとした森に囲まれた、特徴的な丸窓を持つクラシックな外観、用途のよくわからない機械が立ち並ぶ地下の広場、それを一望できるスロープ。そして薄暗いレンガ造りの地下通路。人がたたずむだけで物語が生まれるような建物は、この作品の成功に大きく貢献している。

【文/金尾真里

 

 

 

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