「オマージュ」

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「女性」映画監督の矜持と苦悩、今も昔も


監督/プロデューサー/脚本:シン・スオン
制作:韓国
第34回東京国際映画祭コンペティション部門参加作品
公式サイト:https://2021.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3401CMP07

 【ストーリー】
ジワン(イ・ジョンウン)は、さえない女性映画監督。ようやく独り立ちして撮った監督作品は2作とも振るわず、今公開されている3作目もあまり集客できていない。次の作品のために日々脚本づくりに没頭するも、気がつけば今日も一日が終わる。家事がおろそかになるので夫や息子は非難するが、ジワンは「家族だからと依存しないで。シェアハウスだと思って自分のことは自分でやって」とうそぶく。すると夫は「それなら俺はカネを入れないぞ! 稼げない上に家事もしないなら、映画監督はもうやめろ」とおかんむり。高校生の息子も理解がない。ジワン自身、もう潮時かな、と気弱になっていたときに、「韓国初の女性監督の作品『女判事』の修復を手伝ってくれ」という依頼が来た。修復の過程でジワンはフィルムに欠落部分があることに気づく。当時のことを調べるうち、「初の女性監督」がおかれた立場や、映画界の状況、そして欠落したフィルムの内容がわかってくるのだった。

【みどころ】
ジワンは背も低く、小太りにメガネオカッパの「中年おばさん」だ。その「中年おばさん」がスクール水着に着替えて泳ぎ始める冒頭は、意外性はあるものの、「魅力的」かといえばそうとはいえない。しかし、これが現実だ。家庭を持ち、子育てをしながら映画監督もする女性が、ファッション雑誌の表紙を飾るモデルのように、美人でスタイルがよくていつも微笑んでキラキラしていられようか。ところが「韓国初の女性監督」は、小津安二郎の映画に出てくるような「女優か?」と思うくらい美しく、スタイルも良いのだ。このコントラストこそが、「女性」というジェンダーに世間が求めるものと、自らが望むものとのギャップを端的に表している。それは「時代の匂い」をももたらす鮮やかな対比である。

ジワンは初の女性監督が、いかに孤独だったかを知る。またフィルムの一部が欠落した理由は、今の私たちからすると「え、そんなことで検閲にひっかかったの?」というほど些細なことだ。「韓国社会が求める女性像」が、いかに女性の人生が縛られてきたか。今も昔も根にはびこるものはそれほど変わっていないし、韓国だけの問題でもない。

この修復作業を通し、ジワンは自分も様々な「女性だから」の壁を乗り越えて、今ここに立っていることに気付き、「3作目の壁」も乗り越えてこれからも映画監督として生きようと決意する。映画の冒頭では全くオーラがなかったのに、ラストシーンではとてもいい顔になる。自分に自信を持った時、目標を持てた時、使命を確信した時、人は内側から美しくなる。そのことを素直に納得できる、秀作である。

【初出:Wife398号 2022年2月。「女性が『境界』を越えるとき」から抽出し、、加筆の上公開 文/仲野マリ

「ある詩人」

「ヴェラは海の夢を見る」

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