忠義を支えるOne Team 会計係も山あり谷あり
監督・脚本:中村義洋
原作:山本博文「『忠臣蔵』の決算書」
配給:松竹
公開:2019年11月22日より全国ロードショー
公式サイト:https://chushingura-movie.jp
2019年第32回東京国際映画祭特別招待作品
【あらすじ】
赤穂藩主・浅野内匠頭(阿部サダヲ)は、賄賂好きな吉良上野介を相手に江戸城松の廊下で刃傷に及んだため、即日切腹、赤穂藩の取り潰しを申し渡される。城の明け渡しを迫られた国元では、素直に明け渡すかそれとも籠城するか、意見が二つに分かれる。血気逸る者が次々に、最後まで抵抗するべきだと声高に叫ぶ同時刻、矢頭長助(岡村隆史)ら勘定方の面々は、一刻も早く財産の残務整理を終えるため、必死に算盤と帳面に向かっていた。長助は、幼馴染の筆頭家老・大石内蔵助(堤真一)に「藩のため必死で裏金を捻出してきたのに、なぜ殿様はその金を使わずに藩を潰してしまったのか」と悔しい胸の内を漏らしながらも、吉良への仇討を行うために、資金面で内蔵助を支えていく。
【みどころ】
吉本興業全面協力の下、コメディタッチで「忠臣蔵」を描くと聞くと、かなりハメを外しているように思うかもしれない。だがどうしてどうして、赤穂浪士の討ち入りに関する要所要所の「表」の事実にうまく合致させる話の運びが絶妙で、「忠臣蔵」の世界を知らない人にわかりやすいだけでなく、よくご存知の方にも「なるほど」と思わせるシーンが満載で飽きさせない。赤穂浪士が火消し装束(武家消防団の姿)で討入りをしたという説は有名だが、「消防訓練」から始まるファーストシーンが複数の伏線の発端となっていく。討入りをすることを熱望する「大衆の圧」が彼らを煽り追い詰めていく様子も、テレビも電車もない時代、時間差で届く密書などが作り出してしまう虚実ないまぜの「噂」や「温度差」も、デフォルメされているとはいえ、こうしたものが討入りへの機運を右往左往していた様のは本当のことのように思わせる現実味がある。堤真一は、女好きでいい加減ながらリーダーとして人を惹きつけ牽引していくという、陽気で魅力的な内蔵助を体現。ダブル主演の岡村隆史も、笑わずクソ真面目な表情で文句を言いながら、内蔵助の最大の理解者であり続ける長助役を好演。意表をつくクライマックスには胸をつかれる。浅野内匠頭の未亡人・瑤泉院の”男前”ぶりが小気味良い石原さとみの演技も見逃せない。
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