「マン・オン・ワイヤー」と「ザ・ウォーク」

NYの摩天楼で綱渡りをした男

NYの摩天楼で綱渡りをした男

監督:ジェームス・マーシュ
配給:エスパースサロウ
公式サイト:http://www.espace-sarou.co.jp/manonwire/index.html

【解説とみどころ】
ニューヨークの摩天楼。ワールド・トレード・センターのツインタワーは9.11で崩れ去ってしまい、今はもう幻となった。「マン・オン・ワイヤー」はこの一方の屋上から、もう一方のビルの屋上まで綱を渡し、その上を歩いて渡った男の記録である。男の名はフィリップ・プティ。今までに彼が「綱渡り」をした高いところのリストを見れば、誰もがきっと一度はその姿をテレビのニュースで見たことを思い出すのではないだろうか。無謀な男である。「なぜそんなことをするのか」なんて考えたことはない。山男が「登りたい」と思うのと同じで、彼にあるのは「渡りたい!」という欲望のみ。綱渡りが好き、といってもサーカスに所属したことはない。学校は5回も退学になっている。自分の興味のまま、ただ独り突っ走るだけの人生。しかしこの「ツインタワー」は、独りで征服することはできなかった。「渡る」前に、「しのびこむ」が必要だったから。身分証を偽造したり、何時間も工事現場のシートの中でじっとしていたり、太いワイヤーを渡したり。それができたのは、彼の周りには「いい仲間」がいたからに他ならない。ルパン三世かキャッツアイかといったスリリングな展開に手に汗握る。しかし、その「仲間」との関わり方の顛末を見ると、これは「綱渡りの物語」ではなく、「青春の物語」だと痛感する。プティはいくつになっても青春真っ只中で、時計の止まったピーターパンみたいな人物なのだが、まわりは……やがてオトナになっていく。そんな哀愁も感じさせるドキュメンタリー。実際の綱渡りの映像に、度肝を抜かれること請け合いだ。【文/仲野マリ】

第28回東京国際映画祭のオープニング上映作品は「ザ・ウォーク」だった。「マン・オン・ワイヤー」がドキュメンタリーならば、「ザ・ウォーク」はフィクション。監督はロバート・ゼメキスである。「ザ・ウォーク」のレビューは、以下のとおり、Cinema Art Onlineに寄稿している。【文/仲野マリ】

 

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