発掘された未公開映像がリアルすぎる! 世紀の9日間を体感する生還までの90分
監督・編集・プロデューサー:トッド・ダグラス・ミラー
配給:東北新社 STAR CHANNEL MOVIES
公開:7月19日より、TOHOシネマズ 二子玉川ほか全国ロードショー
公式サイト:http://apollo11-movie.jp
ストーリー&みどころ
1969年7月20日、アポロ11号は人類史上初の月面着陸に成功した。以来50年。アポロ計画が終わりを告げて以降、宇宙に飛び立った者は多いものの、月までは行っていない。逆に巷では、「あれはフェイクだ」「スタジオで撮影された」という説まで飛び交っている。そうかもしれない…と思うほど、このミッションは危険極まりない、無謀な挑戦だったことを、改めて実感する。
アポロ計画を扱ったテレビ番組・映画は数多く、フィクション・ノンフィクションを問わずNASAが提供する映像はふんだんに使われて来たが、今回の映画がそれらと一線を画すのは、NASAではなく、NARA(アメリカ公文書記録管理局)に保管されていた資料が使用されている点だ。ケネディ大統領の就任期間に関する「50年間封印」対象の公文書が公開され、それによってお蔵入りとなっていたアポロ計画関連の資料、超秘蔵70mmフィルムと11,000時間以上による音声データが陽の目を見ることとなったのだ。それらが惜しみなく使われ、それも4K〜8Kにリマスターされているのだからたまらない! 50年前、リアルタイムで月面着陸を白黒テレビの小さなで見ていた筆者にとって、月面は「白黒」でぼやけた世界だったが、今回は鮮やかな色彩に満ちている。当時のテレビクルーが映した白黒映像と比較できる場面も多く、現場と一般人が見たものの差も楽しめる。
また、臨場感を煽るようなナレーションや過剰な効果音は一切ない。ただ画面右下に出るカウンターが、「発射予定時刻まで何分何秒」など、それぞれのミッションまでのカウントダウンを黙々と表す。寸前に起こるトラブルに、背筋が凍る。エンジン部分の切り離しや方向転換のためのドッキングなど、至近距離から映される映像に本人たちの冷静な、しかし緊迫した音声がかぶると、今ドッキングがうまくいかなかったら、逆噴射のタイミングが違ったら、月の周回軌道に乗れなかったらと、まるで自分が当事者であるかのようにドキドキする。とりわけ月面着陸寸前に何度も繰り返される警告メッセージ。何の警告かわからないまま「無視しろ」と言われるアームストロング船長に思わず感情移入。無事着陸できたという50年前の事実を知っていても、生きた心地がしない。発射から帰還まで時系列で繋いでいるところも、「これから先はわからない旅」の一員になれる仕掛けなのかもしれない。
ようやくコンピューターやICが使われるようになった時代に、針の穴を通すほどの精度が要求され、NASAの現場でもアポロ11号の船内でも、それらが全て「吉」と出た、奇跡のチャレンジ。今後人類は、再び月へ行けるのか。いや、行っていいのか、行かせていいのか? 人類の叡智だけでなく、「宇宙」という、とてつもない未知の世界に畏敬を感じずにはいられない、93分の宇宙旅行である。
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