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空母いぶき

攻めるか、守るか? 国を愛する誇り高き自衛官の決断

【監督】若松節朗
【原作・監修】かわぐちかいじ
【配給】キノフィルムズ

【公開】2019年5月24日
【公式サイト】https://kuboibuki.jp

【あらすじ】
近未来の日本。政府は航空機搭載型護衛艦「いぶき」を導入した。巨大さや機能の点から「動く基地」とも称され、長年「専守防衛」論議の的となってきた大型空母だ。艦長は航空自衛隊出身の秋津一佐(西島秀俊)。副長は海上自衛隊の新波二佐(佐々木蔵之介)である。「いぶき」が訓練で出航後、沖ノ島の初島近辺に謎の武装集団船が出没。初島に上陸し自国の国旗を掲げた。日本の領土が占領されるという事態に、政府は「いぶき」に武装集団を無傷で追い払う出動命令を下す。威嚇を始める「いぶき」に武装集団は激しい攻撃を仕掛ける。専守防衛・戦争放棄を掲げている日本ゆえ、攻撃は避けたい。秋津の判断に、日本国民に対する信義がのしかかる。

【みどころ】
空母を取り入れたばかりの日本が他国から攻撃されるという映画。日本の攻防について考えさせられる内容である。原作は漫画だが、近い将来現実に起こりそうな予感がする。
主人公はエリート自衛官・秋津と新波。二人は防大の同期生であり、常にトップ争いをする優秀な人材たちだ。秋津は航空自衛隊出身。「戦闘機乗り」は一人で訓練して独りで戦う自衛官である。一方の新波は海上自衛隊員。「船乗り」は長い航海に出て集団生活を積み重ね、強い仲間意識をもつ自衛官であった。戦闘スタイルが1対1の航空自衛隊と多対多の海上自衛隊では戦う意識も異なる。二人の認識がそのまま緊急事態での論争に通じていく。
ポイントはいかにして殺人をせずに武装集団を追い払うのかということ。専守防衛である自衛隊は、すでに犠牲者が出ているのに敵を追い払うことしか考えさせてもらえない現場は「仲間」を喪っても攻撃に出られないジレンマを抱えている。司令官としては頭の痛い所である。勝利を収めるために、憲法違反をしてでも先に戦闘に打って出るか、あくまで守りに徹するか。手をこまねいてこれ以上殉職者を増やすのか。

砲撃発射のボタンを押したくなる衝動に歯止めをかけるのが「自衛官である」という意識だ。「国を守る」という行為には、幾つもの選択肢がある。現場責任者は、その中から最も良いと思われる作戦を模索する。有事の際に悩み苦しむ現場のトップの決断こそ、国の将来を左右するのだ。
自衛隊は個人の思いだけで行動に移せない組織である。命令一つで動く縦社会は、団体行動を一挙に動かすには適しているが、個人の意見は尊重されない。だが、一人ひとりの「国を守る」という気持ちが、団体の大きな使命感となっているのは間違いない。敵の襲来は国民をも巻き込む最大の危機。それを最前線で食い止めるには、自衛隊の活躍が不可欠といえるだろう。映画のラストに見る秋津の姿は、自衛官である誇りに満ち溢れている。

【文/星野しげみ

 

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