天才が繰り出す革新的ファッションの光と影
監督:ジャリル・レスペール
脚本・脚色:マリー=ピエール・ユステ ジャリル・レスペール ジャック・フィエスキ
原作: ローレンス・ベナム著 『イヴ・サンローラン』
配給: KADOKAWA
封切: 9月6日(土)より角川シネマ有楽町、新宿武蔵野館、シネマライズ他全国公開
公式サイト: http://ysl-movie.jp/
【ストーリー】
1957年、イヴ・サンローラン(ピエール・ニネ)は21歳という若さで、故クリスチャン・ディオールの後継デザイナーに抜擢される。期待にこたえ、華々しくデビューしたものの、ナイーヴすぎるメンタルが禍して事件を起こし、解雇されてしまう。これを契機として独立したサンローランは、ディオールとはまったく異なるテイストで時代の寵児となる。生活力ゼロでビジネスには疎く、作品の産みの苦しみから酒や薬物に溺れるサンローラン。彼を公私ともに支え、ブランドとしての「イヴ・サンローラン」をゆるぎない地位に押し上げたのは、ビジネスパートナーであり愛人でもあるピエール・ベルジェ(ギョーム・ガリエンヌ)だった。しかし、蜜月はいつか終わるもの。サンローランは別の男に惹かれていくのだった。
【みどころ】
まだアルジェリアがフランス植民地だったころ、アルジェリアに入植したフランス人としてかの地に生まれ育ったサンローラン。アルジェリア戦争の真っただ中に両親を置いてパリに来た罪悪感、同性愛者であることによる両親や社会との軋轢、そして天才にありがちな傲慢さ。ここで描かれるものはブランド「イヴ・サンローラン」のイメージとはかけ離れているかもしれない。とはいえ、こうした心の内なる葛藤があったればこそ、あの明るくクリアなファッションが生まれたと思うと、感慨深いものがある。装いとは憧れ、思い描く幸せのかたちなのである。今回はピエール・ベルジェが全面協力したため、博物館級の衣裳が惜しみなく提供されている。オートクチュールからプレタポルテまで、次々と現れるモデルたちの装いには目を奪われる。ファッション史をひもとくようにして、20世紀のファッションの変遷を、心ゆくまで堪能していただきたい。
【初出:仲野マリの気ままにシネマナビonline 2014年9月4日(再録に際し加筆修正)】
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