「馬々と人間」

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アイスランド馬との共生で知る、生と死と恋の手ざわり

監督:ベネディクト・エルリングソン
製作:フリズリク・ソール・フリズリクソン
配給: マジックアワー
後援:アイスランド大使館
封切: 11月1日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー
公式サイト: http://www.magichour.co.jp/umauma/

【ストーリー】
荒涼とした原野に抱かれたアイスランドの寒村。今日は馬と馬とのお見合いの日だ。近所の家々をまわって自慢の処女馬を高い値で嫁がせようとしているのは朴訥な独身男コルベイン。一方、子持ちの未亡人ソルヴェーイグは、自分の持つ種馬と、コルベインの馬をめあわせたいだけでなく、実はコルベイン自身にも密かに秋波を送っている。しかし事態は思わぬ方向へ。毛並のよい白馬娘の気配を感じたソルヴェーイグの種馬は柵を破って娘馬に突進、あろうことか路上で「婚前交渉」に及んでしまう。馬だけが財産の小さな共同体で、掟破りの「恋」は決して許されない。コルベインには、つらい決断が待っていた。

【みどころ】
昨年(2013年)の東京国際映画祭に出品され評判を呼んだ「馬々と人間」が、いよいよ全国公開される。馬の毛並のスーパークローズアップから始まり一切の説明を排しながらこの映画のすべてを提示する最初の10分の、なんと雄弁で濃密なことか! その後この村に起こる人間と馬それぞれの、生と死、そして、恋。北極圏間近のアイスランドの厳しい天候の中で、人々が紡いでいく生活の一端から、「動物」としての人間が原初的に持っている生のエネルギーの強さ、そして温かさがひしひしと伝わってくる佳作である。中年男と中年女の、牧歌的な恋のさやあてはユーモラス。一転、観光乗馬のツアーからはぐれ、吹雪の中助かろうとする男の一夜は壮絶。厳しい自然の中で生きる人間たちのたくましさに圧倒される。
かつて「遠雷」という日本映画があった。野間文芸新人賞を受賞した立松和平の小説を根岸吉太郎監督、永島敏行・石田えり主演で映画化したものだ(1981年)。農業に従事する青年を中心に描かれた人間模様は汗と土の匂いに満ちていた。「馬々と人間」にも同じプリミティヴなエネルギーを感じる。我々はその日を、そしてその次の日をただ生きていく。それが「生き物」である人間の、本能なのだ。幸せであろうとなかろうと、次の日はやってくる。「なぜ生きるのか」とか「幸せでなければ生きる意味がない」などと考えがちな現代人への静かで、しかし強烈なメッセージだ。

【初出:Wife369号 2014年11月 文/仲野マリ(2014年10月26日付仲野マリの気ままにシネマナビ用に加筆修正)】

「イヴ・サンローラン」

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