「書庫」から進化する知の殿堂と「公共」の旗印
監督・製作・編集・音響:フレデリック・ワイズマン
配給:ミモザ・フィルムズ/ムヴィオラ
公開:岩波ホールにて5月18日よりロードショー
公式サイト:http://moviola.jp/nypl/
ストーリー
ニューヨーク五番街の一角に、ギリシャ神殿と見まごう建物がある。美術館か、あるいは政府の重要な建物かと思いきや、そこはニューヨーク公共図書館(NYPL)。外観だけでなく内部も素晴らしく、観光客も無料で見学することができる。NYPLはこの荘厳な本館のほか、地域や目的によって異なる92の分館を擁する。単なる「書庫」に終わらぬ図書館の多岐にわたる活動は、人々の生活に深く関わるものだった。
みどころ
NYには美術館や博物館、劇場や公園がたくさんあるが、そのほとんどが大富豪たちの寄付で賄われている。NYPLは市からも予算を得ているとはいえ、その例外ではない。そもそも流麗かつ壮大な本館は、鋼鉄王カーネギーの財力によって建てられた。しかしカーネギーの志は「公共」である。この図書館を通じて誰もが幸せになれるように。特に教育弱者、情報弱者に寄り添う積極性には「ここまでやるか?」と驚くほかはない。アメリカ社会の現状に鋭く切り込む視点には、ドキュメンタリー作家ワイズマン監督の初心も感じられる。心地よい予定調和がない上に205分と長丁場だが、ぜひ見てほしい映画だ。
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