「甲子園」という人生の魔物
監督・脚本:大森寿美男
原作:重松清「アゲイン」
配給:東映
封切 :1月17日(土)全国ロードショー
公式サイト :http://www.again-movie.jp/
【ストーリー】
元高校球児の坂町 (中井貴一)は46歳。白球を追った日々は遠い。離婚した妻が亡くなって以来仕事にも張りがなく、一人娘の沙奈美とも絶縁状態だ。そんなある日、元チームメイト松川の娘・美枝(波瑠)が訪ねてくる。彼女は震災で死んだ父親の遺品の中に、チームメイト全員に宛てながら出していなかった27年分の年賀状の束を見つけたのだ。「なぜ毎年書きながらも、父はそれらを出さずにいたのでしょう?」美枝が問いかけても、坂町は言葉を濁すのだった。
【みどころ】
年末から年始にかけ、「ミリオンダラー・ゲーム」「バンクーバーの朝日」「KANO」そしてこの「アゲイン」と、野球映画の公開が続く。国や時代は異なれど、いずれも球児たちのまっすぐなエネルギーと、それに勇気づけられる大人たちが描かれていて興味深い。野球には、男たちに「真っ向勝負」を想起させるスイッチがあるのかもしれない。主役の中井貴一以下、 「もう過去のことだから」と青春の日々に見切りをつけ、それぞれの日常に甘んじてきた元球児たちの「うらぶれ感」がリアル。いくら美枝が「マスターズ甲子園でもう一度野球をやりましょう!」と働きかけても自嘲の笑みとともに一歩さがるばかりだ。それでも追ってくる美枝に、押しこめてきた恨みつらみが、全身から噴き上がって暴れ出す。彼女の父親こそが、彼らの「痛み」の原因だから。過去を封印した中年男たちが、傷つきながらも次第にかつての「全力投球」を思い出し、家族とともに再生していく。その過程がまさに「二度目の青春」として描かれる。
【初出:仲野マリの気ままにシネマナビonline 2015年1月9日(再録に際し加筆修正)】
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