アクション大好き人間に贈るスーツアクターの夢と現実
監督:武 正晴
脚本:水野敬也 李 鳳宇
配給: 東映
封切: 9月6日(土)ロードショー
公式サイト: http://in-the-hero.com
【ストーリー】
正義を愛し、ブルース・リーを崇拝する本城渉(唐沢寿明)は、『下落合ヒーローアクションクラブ』の社長で、スーツアクターとしてはこの道25年の大ベテラン、といえば聞こえはいいが、「いつかは顔の出る主役に」との思いはなかなか実現しないまま鳴かず飛ばず。「スーツアクター」が夢みるのは、顔を出して演じる「アクション俳優」なのだ。ようやく「顔を出す」悪のボス役がまわってきても、若手新人俳優の一ノ瀬リョウ(福士蒼汰)に取られてしまう。リョウにもフラストレーションがたまる。彼はハリウッド製作のアクション忍者映画『ラスト・ブレイド』への出演を目指しており、頭の中はオーディションのことだけで練習に身が入らない。この役を受けたのは、マネージャー(小出恵介)の「ベテランスーツアクターの渉に殺陣を学ばせたい」という思いからであり、リョウ自身は子ども向けのヒーロー映画になどまったく興味がなかった。その『ラスト・ブレイド』から、なんと渉に白羽の矢が! クライマックスで繰り広げられるノーワイヤー、ノーCGで臨む決死の長回しシーンをぜひ日本の「真のアクション俳優」に、というラブコールである。ついにやって来たこの瞬間に、渉は狂喜乱舞!しかしその役は、決まっていた大物俳優が危険を感じて降板した役だった。「伝説のスーツアクター」もすでに42歳。満身創痍で首に爆弾疾患を抱えていることを知る元妻の凛子(和久井映見)は、心配でたまらない。果たして渉は命を懸けて、この一世一代のチャンスをモノにできるのだろうか?
【みどころ】
最近は、戦隊もののドラマ出身の人気俳優が増えているが、彼らは主役として「顔を出して」演じている。唐沢寿明は、スーツアクター経験者から日本のトップ俳優に上り詰めた数少ない例の一人かもしれない。そんな唐沢だからこそ、スーツアクターたちの日々の訓練や情熱にリアリティがある。アクションにもキレがあり、映画が締まる。(写真の、唐沢の足の線の美しさに注目!)「太秦ライムライト」にも出演していた松方弘樹がここでも顔を出すサプライズ! やはりラストに凄まじい殺陣を見せてくれるのがうれしい。この映画には、「ものづくり」の質や精神性にこだわるその真髄が描かれている。映画に関わるすべての人たちが、映画を愛し、自分たちの仕事に誇りを持って取り組んでいる。そのことの清々しさ。子どもたちに夢を与えるため、自分ができる最高のことをしようとしている人々に、乾杯したい気分だ。「蒲田行進曲」のオマージュもあちこちに。それを見つけるのもまた、映画ファンには楽しい。
【初出:仲野マリの気ままにシネマナビonline 2014年8月30日(再録に際し加筆修正)】
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