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「NO(ノー)」

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CMソングがチリ恐怖政治打倒の原動力に!?

監督: パブロ・ラライン
脚本:ペドロ・ペイラノ
オリジナル戯曲:アントニオ・スカルメタ「国民投票」
配給・宣伝:マジックアワー
封切: 8月30日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、テアトル梅田、シネ・リーブル神戸ほか全国順次ロードショー
公式サイト: http://www.magichour.co.jp/no/

【ストーリー】
レネ(ガエル・ガルシア・ベルナル)は、テレビCMを手掛ける広告マン。コーラのCMなど、大衆受けする映像を得意とするレネに、思わぬ依頼が。軍事政権下のチリで行われる国民投票の、野党連合側キャンペーン番組だ。父の旧知からの申し入れに、彼は上司の目を気にしながらも協力を約束する。視聴者の嗜好や心理把握に長けたレネが繰り出した明るく軽妙な「政治CM」は、これまでの堅苦しい野党の殻を破り、多くの賛同者を得始める。が、それと同時に、敢えて政治と距離をおいてきたレネとその家族の周りには恐ろしい影がつきまとい始めるのだった。

【みどころ】
この作品は2012年の東京国際映画祭で、もっとも感銘を受けた映画の一つである。このほど配給がついて日本に再上陸したことを、心から喜びたい。テンポ良く、月9業界ドラマのようなノリで始まりながら、実はとっても深いお話。民主主義を守るために、普段は政治に無関心な「B層」を動かせ!そのためには…という「手口」と「勇気」と「連帯」を見せてくれる。といってもフィクションではなく、1988年チリ、ピノチェト政権の下で実際に起こった話に基づいて作られている。軍政に反対する若者たち次々と姿を消し、密かに処刑されていった恐怖政治が世界的にも問題となり、国民投票を余儀無くされたピノチェト。しかしそれは不平等なものであり、圧倒的に不利な条件でのキャンペーンしか許されない野党連合には、当初勝ち目がないと誰もが思っていた。それなのに、なぜ劇的な、それも無血の政権交代は成功したのか。大衆は、どんなに現実に絶望していても、単に正論を振りかざし、反対のための反対を繰り返すだけでは動かない。彼らの心の中の勇気に火をつけるのは、夢と希望なのだ。そのことに改めて気づかされるとともに、これは地球の裏側の、昔の話に終わらないと強く感じる。レネと野党のお偉方とのやりとりを観ていると、そのまま日本のあの人、この人の主張そっくりに思えてしまうから。今、日本で、ぜひとも観るべき映画ではないだろうか。特に市民活動家は好いお手本として、クリエーターは、自分の力の使い所を考える上で、必見である。

【初出:仲野マリの気ままにシネマナビonline 2014年8月26日(再録に際し加筆修正)】

 

「テロ,ライブ」

「イン・ザ・ヒーロー」

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