なぜ人はファンタジーを愛するのか〜馬琴が「八犬伝」に込めた人生の真実〜
監督・脚本 : 曽利文彦
原作:山田風太郎(『八犬伝 上・下』)
配給:キノフィルムズ
公開:2024年10月25日(金)全国ロードショー
公式サイト:https://www.hakkenden.jp/
【ストーリー】
滝沢馬琴(役所広司)は八犬士の物語を構想中。葛飾北斎(内田聖陽)に内容を聞かせ、いつも通りその挿絵を依頼するが、馬琴は言下に断る。断っておきながら、話の続きを聞きたくて、以後もしばしば馬琴のもとを訪れる北斎。ある日2人は新作芝居「東海道四谷怪談」を観に出かけた。鶴屋南北の描く世界は、馬琴の目指す方向性と全く異なるものだった。
【みどころ】
「南総里見八犬伝」は、馬琴が28年をかけて完結した全 98 巻の大長編ファンタジーだ。現代にも読み継がれ、NHKの人形劇「新・八犬伝」をはじめ、秀れた二次創作も多い。本作は山田風太郎の原作。八犬伝の物語と、それを構想する馬琴の実生活が交互に展開し、物語パートでは土屋太鳳、栗山千明、板垣季光人など若手俳優が活躍する。実生活パートでは寺島しのぶや黒木華が重要な役回りだ。
白眉は馬琴・北斎・南北の巨匠3人による「芸術鼎談」。なぜ人はフィクション=虚の世界を欲するのか、作家はフィクションに何を込めようとしているのかを、芝居小屋の奈落という暗闇の中で突き詰めていく。鶴屋南北を演じたのは落語家の立川談春である。独特の存在感で、日本が誇る名優2人に引けをとっていない。
歌舞伎シーンは本物の歌舞伎役者で劇中劇として登場するのが鶴屋南北の作品「東海道四谷怪談」、いわゆる「お岩さん」の物語だ。四国・琴平町にある昔ながらの芝居小屋「金丸座」を舞台に、本物の歌舞伎役者たちが歌舞伎を演じている。短時間だが本格的で、贅沢なロケだ。民谷伊右衛門を演じるのが中村獅童、お岩を演じるのは尾上右近。それぞれ七代目市川團十郎、三代目尾上菊五郎という当時の千両役者に扮する。彼らにとっては身の引き締まる思いだろう。
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