迷い、あがき、たどり着く道 かるたに賭けた高校最後の夏
監督:小泉徳宏
配給: 東宝
公開:3月17日(金)TOHOシネマズ ほか全国ロードショー
公式サイト:http://chihayafuru-movie.com/#/boards/musubi
【ストーリー】
幼い頃から競技かるた一筋の千早(広瀬すず)は、高校で再会した幼なじみの太一(野村周平)と競技かるた部を発足。2年連続全国大会進出の好成績を残す中、離れた場所でかるたを続けていたもう一人の幼なじみ・新(新田真剣佑)から「好きだ」と告白され、心を揺さぶられる。次の春、新入部員を迎え最後の全国大会へ向かって練習に熱が入るかるた部を太一が突然退部。追いかける千早に太一は「お前のためにかるたをしていた。でも、もうこれ以上やれない」と告げ、背を向ける。幼なじみ3人の関係が変わりゆく夏、高校最後の大会が始まる。
【みどころ】
公開が続く人気漫画実写化作品。その成否は、原作を知っている人も、知らない人も楽しめるかで大きく分かれる。「ちはやふる」シリーズは「かるた」というマイナー競技を題材にしながら、原作を知らない幅広い層に受け入れられた“青春映画の秀作”だ。
競技かるたは、小倉百人一首を1対1で取り合う“静かな格闘技”だ。畳を叩く激しい音、読み手が最初の一字を発する前の静寂、交差する真剣なまなざし、札に手を伸ばす瞬間の息を呑むほどのスピード。緻密なカメラワークやバランスの良い説明で、試合に潜むドラマ性が巧みに描かれ、この知られざる世界をかっこいいスポーツとして見せている。その緊張感は、競技を会場で見ているようなインパクトで迫ってくる。
また、今作では3人のかるたへ向かうスタンスの違いが丁寧に描かれる。特にキーパーソンとなる太一が見せてくれるのは、常に迷い、自分の居場所を掴みきれずに模索を続ける、青春のもう一つの姿だ。誰もが本気で打ち込める何かを見つけられるわけではない。一心不乱に何かに向かって走り出せる純粋さと、すれ違いを受け入れられずぶつかり合う脆さ、自分をコントロールできないもどかしさは表裏一体。青春の普遍的な要素と、熱く激しくかっこいい競技かるたの世界が見事に組み合わさり、情熱の余韻を心の中に残していく。
【文/深海ワタル】
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