エッジーな狂気と笑いで描くヴェネチア観光案内
〜バチェロッテパーティーの夜、友人は消えた
監督/脚本/プロデューサー:アレックス・デ・ラ・イグレシア
制作:スペイン
第34回東京国際映画祭ワールドフォーカス部門参加
共催:ラテンビート映画祭
公式サイト:https://2021.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3404WFC03
【ストーリー】
スペインの若者たちがヴェネチアに着いた。ヴェネチアのカーニバルの中で結婚式を挙げるクラウディアとそのきょうだい友人一行だ。出迎えたのは「観光公害」に反対するデモ隊。しかし乗った小舟にはヴェルディのオペラ「リゴレット」の道化に扮したコスプレ男も乗船し、気分はノリノリ。新郎は仕事で合流が数日遅れるというので、クラウディアは独身最後の旅をヴァチェロッテパーティーよろしく思い切り羽目を外す。昔の貴族の恰好でヴェネチアを闊歩すれば、まるでタイムスリップしたかのよう。しかし泥酔し所かまわず大騒ぎする彼らに、地元の人たちの目は冷たい。一夜明けると、弟の所在がわからなくなっていた。「そのうち帰ってくるだろう」と思っていたが、友人たちは一人、また一人と消えていく。そして運河に、死体が上がった。彼らはヴェネチアの古い扉を開けてしまったのか? 悲劇はこれだけでは終わらなかった。
【見どころ】
ヴェネチアのカーニヴァルという、都市全体がテーマパークのような時期をロケーションとした、楽しい観光案内と思いきや、テンションの高いバカ騒ぎから一転謎の連続殺人事件、というジェットコースターストーリー。「笑い」と「恐怖」とが一瞬で切り替わり、そのスピード感に翻弄される。カーニヴァルのコスプレ衣裳が豪華絢爛。その中であちこちに出没する「道化」の不気味な存在感。これが、単なる「殺人鬼」ではなく、21世紀の秘密結社にまでつながっていくところが一筋縄ではいかないところだ。そこに「ヴェネチア」という土地に刻まれた数々の歴史があり、観光が負の遺産として積み重なる現在の状況も重なる。世界遺産となっているヴェネチアの古い建物の内外が殺人現場になっているところから、ゴシックホラー的なおどろおどろしさが増幅される。
冒頭のタイトルやクレジットのデザインから、これが1960年代の「ジャッロ」映画のオマージュであることがうかがい知れる。「ジャッロ映画」とは、過度の殺人や狂気をスタイリッシュに描いた作品群の総称で、「黄色(ジャッロ)の表紙」の雑誌からくるという。
それにしても、「わきまえない観光客」と「それをよく思わない地元民」という構図は、洋の東西を問わずいるのだなとつくづく感じた。
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