ピカソの絵を盗む、その闇バイトは「ホワイト案件」?
監督 :テオドラ・アナ・ミハイ
第37回東京国際映画祭コンペティション部門出品
最優秀主演女優賞受賞 (アナマリア・ヴァルトロメイ)
公開:未定
公式サイト:https://2024.tiff-jp.net/ja/lineup/film/37002CMP14
【ストーリー】
ルーマニアの片田舎。ナタリア(アナマリア・ヴァルトロメイ)は、夫のジネルと幼い娘、そして夫の老母の4人で暮らす。が、生活は貧しい。よりよい稼ぎを求め、老母に娘を預け、夫婦でオランダに出稼ぎに行く。しかしナタリアは農場、ジネルはゴミ分別工場勤めで賃金は低い。同郷で金回りのいいイツァに、借金を重ねる毎日。やがてジネルはイツァの言うまま、美術館の絵画を盗む企みに引き込まれていく。
【みどころ】
この映画は2012年に実際に起こった、ルーマニア人がオランダのロッテルダム美術館の名画7点を強奪した事件を基に作られた。西欧と東欧の貧富の差を背景に、出稼ぎ者の劣悪な生活などが描かれる。
だが日本人から見ると、警報装置も監視カメラもお構いなくガラスを割り、数分のうちに根こそぎ品を持ち去るやり方は、最近頻発する「闇バイト強盗」にしか見えない。ジネルが「車を運転するだけ」と自分に言い聞かせ、「ホワイト案件」から悪事に手を染めていくところも。あまりの類似に、圧倒的な貧富の差が、日本にもあることを痛感させられる。
監督は、「母の聖戦」のテオドラ・アナ・ミハイ。終盤の、老母の決意に彼女らしさがうかがえる。老母の表情に注目。「踏みにじられた存在」の憤怒が突き刺さる。
【文/仲野マリ】
同監督による映画「母の聖戦」
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