天下分け目の6時間が
戦争の緊張と理不尽をあぶり出す
監督・脚本:原田眞人
原作:司馬遼太郎(「関ケ原」)
配給:東宝=アスミック・エース
公開:8月26日(土)より全国ロードショー
公式サイト:http://wwwsp.sekigahara-movie.com/
【ストーリー】
慶長5年(1600年)秋、石田三成(岡田准一)は軍師とも頼む猛将・島左近(平岳大)を連れ、関ヶ原一体の地形物見に出ていた。豊臣秀吉(滝藤賢一)の死後、徳川家康(役所広司)は幼い秀頼公を無視し、勢力を伸ばす。三成は「義」を唱え、この地の戦いで一気に流れを引き戻そうと士気は高い。しかし豊臣恩顧の武将たちは次々と徳川率いる東軍へ。豊臣の血筋にあたる西軍の小早川秀秋(東出昌大)も、心揺れていた。
【みどころ】
司馬遼太郎の原作に惚れ込んだ原田監督が、25年の月日をかけて熟成した複眼の政治ドラマ・人間ドラマである。俳優陣は実力派揃い。中でも島左近を演じる平が魅力的だ。岡田扮する三成のまっすぐすぎる理想主義を支えながら、すでに瞳は悲劇を予感している。小早川の東出も、19歳で「決断」を迫られる参加中最年少武将の苦悩を、ほとばしる激情で好演。秀吉の才気と老醜を不気味に体現した滝藤や、時代劇初とは思えぬ所作と気迫で伊賀者の女・初芽を演じきった有村架純も印象深い。血まみれで命を散らす武者らと、無傷で智略を巡らす本陣の家康と。まさに戦争は老人が始め、おっちゃんが命令し、若者が死ぬ。戦争の真実がここにある。
【初出:Wife380号 2017年8月 文/仲野マリ)
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