僕の幸せは、僕だけが決められる!
監督・脚本:マチェイ・ピェブシツア
配給:アルシネテラン
封切:12月13日(土)より岩波ホールほか、全国順次公開
公式サイト: http://www.alcine-terran.com/shiawase
【ストーリー】
1980年代のポーランド。幼いマテウシュは、重度の身体障害を持つ。マテウシュの母は治療と回復の可能性を求めて病院を回るが、意思疎通のできないマテウシュに対し、医師は「知的障害」「植物状態」と判断、サジを投げる。そんなマテウシュを、家族は明るく愛情深く育て、マテウシュは好奇心旺盛、天真爛漫な少年時代を送る。しかし父親の急死でマテウシュは施設へ。そこである日、瞼の動きで意思を伝える方法が試され、青年マテウシュが「知的障害」ではないことがようやく証明される。世間の注目を浴び、高等教育への扉が開いたマテウシュだったが、その実現のためには、ようやく見つけた「居場所」を諦める必要があった。
【みどころ】
障害者物語というと、日本人は「真面目な人の逆境克服」を想像しがちだが、マテウシュは恋もすればイタズラもし、苛立ったり傷ついたりもする。自分への差別に憤慨して悪態もつく反面、逆に自分が知的障害者「なんか」ではない!という差別の心を持っている。そこから彼がどのように成長していくかも、見届けてほしい部分である。また、この映画でもっとも魅力的なキャラクターは、マテウシュの父親だろう。息子が言葉を発しようが発しまいが、体が動こうが動くまいが、パパはいっこうに気にせず、息子が喜びそうなことをし、自分の好きな話を子どもに話す。ポーランドに自由が訪れた日の、花火のシーンは美しくも哀しい。「世間」の常識にとらわれない父親の存在がいかにマテウシュの人間形成に必要だったか。家族のあり方にこそ、この映画の醍醐味があるのではないだろうか。ほかにも母親の、息子の生命力を確信して医者の言葉を鵜呑みにしない強さ、きょうだいの、マテウシュに対する愛、嫉妬、煩わしさなど、自然体だからこそ共感できる感情に満ちている。主演のダヴィド・オグロドニクは健常者だが、脳性麻痺を持つマテウシュになりきって見事。当事者たちとも会い、長期間の準備期間をもって、完璧なパントマイムとして動きを習熟したという。まるでドキュメンタリーを見ているような自然な演技を見せてくれる。
【初出:仲野マリの気ままにシネマナビonline 2014年12月12日(再録に際し加筆修正)】
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