火曜日しか生きられない男が知った「水曜日は蜜の味」
監督・脚本・VFX:吉野耕平
配給:日活
公開:2020年6月19日(金)、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
公式サイト:http://wednesday-movie.jp
ストーリー
「僕」(中村倫也)は16年前、事故をきっかけに7つの人格が生まれ、朝起きると毎回人格が入れ替わるようになってしまった。そのため「火曜日の僕」は火曜日しか生きられない。医師・安藤(きたろう)に見守られながら、この16年を綱渡りのようにして生きてきた。「火曜日の僕」は几帳面だが、「月曜日の僕」は破天荒。そのため月曜の尻ぬぐいを火曜がするハメになる。そんなことより悔しいのは、一度入ってみたい図書館が火曜定休なことだ。ところが、ある朝目覚めるとなぜか水曜日! 初めて体験する「2日生きられる人生」は輝きに満ちていた。
見どころ
多重人格を扱ったドラマや小説は多々あるが、その多くはトラウマなど精神的な原因があるものがほとんどだ。だが本作は原因よりも、「火曜日しか生きられない男」という状況に重きを置き、自分の知らないところでもう1人(正確にはもう6人)の責任を引き受けなければならない人生を淡々と生きる青年を描き、7つの人格を持ちながら16年生きた「奇跡」から逆算する「僕」の幸せを深く考えさせる。
医療者からすれば、多重人格という「病気」の治療のゴールは「人格の統一」と考えがちだが、7人の「僕」がそれぞれに考え、感じ、「僕」らしく生きている状況で、誰か1人に「統一」することが本当のゴールなのか、という問題提起が新しい。同じ医師でも見方を変えて安藤(きたろう)と新木(中島歩)を描いている。
「火曜日の僕」の正体を知る幼なじみの女性・一ノ瀬(石橋奈津美)、多重人格であることを知らずに「僕」に好意を寄せる図書館司書の女性・端野(深川麻衣)の役割にも注目したい。
*本作は2020年5月15日封切の予定だったが、世界を呑み込んでまだ収束の目処がつかない新型コロナウィルスの感染拡大を受け、公開日が延期され、このたび6月19日に決定、無事公開した。
この記事へのコメントはありません。