近未来のジャンヌ・ダルク、ガレキの上に立つ
監督:フランシス・ローレンス
配給:KADOKAWA
封切 :6月5日(金)TOHOシネマズ みゆき座他全国ロードショー
公式サイト :http://hungergames.jp
【ストーリー】
カットニス(ジェニファー・ローレンス)は、ハンガー・ゲームの歴代優勝者が集結した第75回記念大会の闘技場から、危機一髪のところで救出される。彼女が収容されたのは、第13地区の地下にある反乱軍の秘密基地だった。13地区は滅亡したとされていたが、コイン首相(ジュリアン・ムーア)率いる反乱軍が、独裁国家パネムを打倒と新国家建設をめざし、ここで戦いの準備を進めていたのだ。士気を高め人心をまとめるため、革命のシンボルを必要としていた反乱軍は、カットニスにその役を依頼する。それを見越していたスノー大統領は、カットニスの盟友・ピータ(ジョシュ・ハッチャーソン)をテレビ番組に担ぎ出してプロパガンダに利用する。ピータはカットニスが脱出するときに捕まり、人質になっていたのだ。胸を引き裂かれるカットニス。反乱軍はピータ救出作戦を実行するが、その先にはさらなる過酷な運命が待っていた。
【みどころ】
映画の最大の魅力は、なんといっても主人公カットニスを演じるジェニファー・ローレンスのかっこよさだ。情に厚く、理知的で高潔な精神を持ち、かつ勇敢で美人。息をもつかせぬアクションももちろんみどころ。「二匹目のどじょう」を狙ってシリーズ化される映画は後を絶たないが、1作、2作とも連続して大ヒットする映画はなかなかない。各地区からくじで選ばれた若い男女が森でのサバイバルゲームに投げ込まれ、最後の一人になるまで殺し合いをさせられる第1作は、そのあらすじだけを聞くと「バトルロワイヤル」の二番煎じのようでもあり、あるいはバトル系ゲームを映画化しただけと捉えるむきもあった。しかし独裁国家における人民の疲弊や自由の蹂躙がもたらす苦しみ、「殺さなければ生き残れない」というギリギリの選択を常に押し付け、 巧みな情報操作で各地区の連隊を阻むやり方は、すでに第1作から単なる娯楽を突き抜けて、非常に政治的な要素を含んだ 極めて深い物語である。「ハンガーゲーム」は近未来のジャンヌ・ダルクとなったカットニスの、一代大河ドラマとなっている。
2作目は「優勝者2人は恋に落ち、結婚し、そして幸せに暮らしましたとさ」という虚構を演じさせられ憎むべき独裁政府の広告塔となって国中を巡業させられるカットニスとピータの葛藤を描いた。「ウソの生活なんかできない」というカットニスと生き残るために何をすべきか冷静に考えるピータ。「流されれば楽に生きられる。ほかの人たちの幸せなんてどうでもいい」そうした誘惑に抗い続ける2人。ついに「虚構」を捨てるが、ピータはつかまってしまうのだ。その続きとしての、本作。「レジスタンス」というタイトルが示すように、これは反政府軍の戦いの日々の記録である。ガレキの山、死傷者であふれる野戦病院、人々を鼓舞するリーダーの演説…。もはや「娯楽」を突き抜け「フィクション」も突き抜け、今、世界中のあちこちで起きている市街戦の真っただ中に身を置くような感覚になる。汚れた身なりで無表情に労働へと向かう庶民と、宮殿のような大統領府で優雅な生活を送る支配者たち。互いに情報戦を制しようとプロパガンダ合戦に明け暮れる両者。その裏で街ごと空爆され、すべてを失う庶民。この戦いに、終わりはあるのか?戦いの虚しさ、戦いの中で生きる苦しさを、自らの問題として突きつけられる。これを「娯楽作品」として全米年間興行第1位にさせた手腕は並ではない。
【初出:仲野マリの気ままにシネマナビonline 2015年6月5日 文/仲野マリ(再集録にあたり加筆修正)】
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