「這い上がりたい男たち」の一発逆転は成功するか?
監督: 品川ヒロシ
配給: KADOKAWA 吉本興業
公開: 2014年4月1日【(火)エイプリルフール】全国ロードショー
公式サイト: http://www.sanbunnoichi.jp/
【ストーリー】
キャバクラ「ハニーバニー」の店長・シュウ(藤原竜也)は借金で首がまわらない。その上一発当てて返そうと行った競馬場で、店の金を紛失してしまい、鬼よりコワイオーナー・破魔翔(窪塚洋介)に合わす顔がない。やむなく「川崎の魔女」と恐れられる闇金女王・渋柿多見子(池畑慎之介☆)に金を借りて埋め合わせるも、それが地獄の始まりで、シュウは執拗に返済を迫られる。同じく「ハニーバニー」のキャバ嬢・まりあ(中島美嘉)は、破魔翔にAV女優として売られそうになっていた。人間の尊厳などかけらも認められない「クソみたいな人生」から一発逆転で這い上がるためには、もう手段を選んでいるヒマはない! 二人は銀行強盗を計画、シュウはやはり借金まみれの人間である弟分のコジ(田中聖)と店の常連・健さん(小杉竜一)を仲間に引き入れる。しかしコジと健さんは、まりあの存在を知らされていない。分け前は、最初から「サンブンノイチ」ではなかった。誰もが疑心暗鬼の中、なんとか自分の持ち分は増やしたい。味方同士は敵同士? 騙し騙されるサバイバルゲームが始まる。
【みどころ】
この映画の本題は「銀行強盗」ではなく、「分け前」をどうするかだ。それも、単に「シュウとまりあ」が「コジと健さん」を騙す、というような単純な話ではない。カネのない者同士の争いであったり、搾取されまくる者たちが、支配する側のハナをあかす闘いであったり、裏切り者は誰か、最終的に誰が勝つのか、まったくわからなくなる。観客としては主人公たちの「這い上がりたい」思いに感情移入しながらも、だからといって銀行強盗で億万長者でいいのか?という良心のうずきもある。そのあたり、きちんと「落とし前」をつけるところがまたまた爽快。それにつけても、光るのは窪塚洋介と池畑慎之介☆の怪演である。「いかにも」な悪の権化を演じ、迫力とリアリティでぐいぐいと場面を引っ張っていく。また、深刻な役を演じることが多い藤原竜也だが、実はコメディセンスにあふれており、それが存分に活かされている。KATTUNを脱退した田中聖も魅力的で、これからが期待される。監督は芸人の品川ヒロシ。その関係もあってか、有名芸人が多数出演する。レイザーラモンHGの渋い演技に注目だ。前半、デフォルメされたカットの積み重ねとともにコント的な応酬が続くので、ともすればセリフが上滑りしそうなきらいがあるが、その「上滑り」までもが計算しつくされた「演技」だとわかる、見事などんでん返し! 見終わった後、もう一度最初から見たくなる。
【初出:仲野マリの気ままにシネマナビonline 2014年4月4日(再録に際し加筆修正)】
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