「イヤ」と言えないすべての女性に
~今語られる「ディープスロート」の真実~
監督: ロバート・エプスタイン/ジェフリー・フリードマン
配給: 日活
封切: 3月1日(土)ヒューマントラスト有楽町ほか全国順次ロードショー
公式サイト: http://lovelace-movie.net/
【ストーリー】
1970年、フロリダ。21歳のリンダ(アマンダ・セイフライド)は女友達と遊びに行った帰り、バーの経営者チャック・トレーナーと出会った。厳格なカトリック信者の両親のもとで育ったリンダは、自由奔放なチャックに傾倒、親の束縛から逃れるように家を出る。それは自分らしい生活を夢見て決めた結婚だったが、実際は新たな「束縛」の始まりだった。金策のため、リンダは夫の言うままにポルノ女優に。主演映画「ディープスロート」は社会現象的な大ヒットとなるが、チャックは金を使い果たし、リンダにさらなる犠牲を強いる。
【みどころ】
なぜ女性は、好きな男性に「イヤ」といえなくなるのだろう。「今はイヤ」「そんなことはイヤ」「絶対イヤ」…その一言が言えれば…。いや、言ったとしても、男は切り返してくる。「愛していればできるはず」「愛しているから頼むんだ」―そして、その「愛」を「セックス」とイコールにして女を説得する。殴っても、罵倒しても、最終的に抱いてしまえばこっちのものだと思っている。ひどく殴られた晩、リンダが実家に救いを求めるシーンが切ない。母親(シャロン・ストーン)は一言、「夫には従うものよ」と言い放つ。子は親に、妻は夫に、従順であることだけを美徳とする価値観が、リンダから退路を奪うのだ。
この映画を「かつて一世を風靡したポルノ映画の伝説的主演女優の半生」とくくるのはたやすい。しかし、描かれているのは特別な女性ではない。まじめで優しくて、ちょっと世間知らずな女の子なら、誰でもいつでも陥ってしまう蟻地獄である。人生の袋小路にはまるずっと手前で逃げられるよう、「イヤ」と言い通せる強さと賢さが心底欲しくなる作品である。
【初出:仲野マリの気ままにシネマナビonline 2014年2月21日(再録に際し加筆修正)】
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