「忠臣蔵」に人類共通の騎士魂を見る
監督:紀里谷和明
配給:KIRIYA PICTURES/ ギャガ
公開:11月14日、 TOHOシネマズ スカラ座他にて全国ロードショー
公式サイト:http://lastknights.jp/
【ストーリー】
腐敗政治がはびこる帝国が支配する世界。権力をかさに強要する賄賂を断り大臣に刀を向けたバルトーク卿(モーガン・フリーマン)は、斬首に処される。一年後、城を追われた騎士達は身分を隠して暮らしながら、復讐の機会をうかがっていた。隊長のライデン(クライヴ・オーウェン)は酒浸りの日々を過ごすとみせかけ、油断を誘う。いよいよ、宿敵を倒す日がやってきた。彼らは難攻不落の城に潜入できるのか。
【みどころ】
「仮名手本忠臣蔵」をベースにした本作品。といっても、そこはハリウッド映画。架空の世界、架空の国での物語に換骨奪胎してある。当初登場キャラクターが全員日本人だったものを、「日本の、特別な話として片づけられたくなかった」という紀里谷監督が多国籍の俳優が違和感なく物語に溶け込めるように再構築した。だから、さまざまな国や民族の名優たちが出演している。浅野内匠頭はモーガン・フリーマン、大石内蔵助がクライヴ・オーウェン。韓国の名優アン・ソンギは加古川本蔵という渋い役どころ。日本からも伊原剛志が、清水一学を思わせる帝国側(吉良側)の剣の達人を演じる。寡黙な中に存在感が光る重要な役回りだ。アクションありサスペンスありの中に、正しい生き方(義)のため立ち上がる人々の物語が浮き彫りになる。クライマックスの「討入り」は圧巻。ダムのように立ちはだかる城壁をはじめ、待ち受ける数々のダンジョンを前に「彼ら」はひるむことなく立ち向かっていく。待ち受ける帝国側(吉良側)たちとの戦い、特に伊原とオーウェンとの一騎打ちは「奥庭泉水の場面」(竹森喜多八と小林平八郎の殺陣)をほうふつとさせる。このように、原典を細部まで理解した上で練られた脚本は見事。(この脚本、最初に書いたのはカナダ人である)「忠臣蔵」をよく知る人にとっては、登場人物や有名なエピソードがどのように形を変えて姿を現すか、あるいはどの設定が変えられているかを発見するのも楽しみの一つ。逆に知らない人は、「忠臣蔵」を理解する格好の機会になるのではないだろうか。
【初出・Wife373号 2015年11月 文/仲野マリ(「仲野マリの気ままにシネマナビonline」のために加筆修正)】
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