「檻」に入れられた人間の尊厳
監督:ニキ・カーロ
原作:ダイアン・アッカーマン
配給:ファントム・フィルム
公開:12月、TOHOシネマズみゆき座他にて全国公開
公式サイト:http://zookeepers-wife.jp
【ストーリー】
アントニーナ(ジェシカ・チャステイン)は、夫のヤン(マイケル・マケルハットン)とワルシャワ動物園を経営していた。欧州最大級を誇る園で、愛情深く動物たちと接するアントニーナ。しかし1939年ナチスがポーランドに侵攻、動物園も爆撃を受ける。やがてユダヤ人が狭いゲットーに押し込められ始めた時、2人は親友を地下室にかくまうことを決意。以降、動物園はユダヤ人救出の秘密中継地となる。
【みどころ】
この映画のキーワードは「檻」だ。動物園は動物を檻に入れて管理する場所だが、アントニーナやヤンは動物を子どものようにいつくしむ。しかし乗り込んできたドイツ人将校ヘック(ダニエル・ブリュール)は、動物学者として理解がありそうでいて希少動物の価値にしか目を向けない。この対比は象徴的だ。
なぜならゲットーはユダヤ人を管理する「檻」だから。生殺与奪の権利を持つナチスは人間、ユダヤ人やポーランド人は家畜同然。当時のポーランドは国全体がナチス管理下の「檻」ともいえよう。
そんな中で体制に逆らう日常は、緊張の連続だ。ヘックに秘密を悟られまいと平静を装うアントニーナの、震える小鳥のようなか弱さに胸が締めつけられる。
【初出:Wife381号 2017年11月 文/仲野マリ】
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