「坂道のアポロン」

2018年9月19日Blu-ray & DVD 発売決定

鍵盤とドラムがつないだ孤独を分け合う“魂の双子”

監督:三木孝浩
配給:東宝=アスミック・エース
公開:2018年3月10日、TOHOシネマズほか全国順次公開
公式HP:http://www.apollon-movie.com

ストーリー】
物語の舞台は1960年代の長崎県・佐世保。父を亡くし、親戚の家に預けられた薫(知念侑李)は、転校先の高校で札付きの不良・千太郎(中川大志)と、その幼なじみ・律子(小松菜奈)に出会う。クラシックピアノの演奏が支えだった薫は、ある日、律子に誘われて行った地下室で、生き生きとドラムを叩く千太郎を目にすることに。その楽しそうな姿と彼が演奏するジャズに心を奪われる。やがて薫は、千太郎が教会に捨てられた孤児と知り、孤独を抱える二人の絆は一生ものの友情へと変わっていく。だが、幸せな3人の日々は長くは続かなかった。

【みどころ
映画と音楽は切っても切れない。名作の多くには、耳に残る曲がつきもの。ジャズの心弾む音に彩られたこの映画も、最大の見どころは彼らのセッションだ。鍵盤の上で軽やかに踊る指、腕がそのまま伸びたように自在に動き回るスティックから心浮き立つリズムが刻まれる。ほかのどんな場面よりも輝いて見える2人の表情からは、心から演奏を楽しみ、相手と共演できる喜びが伝わってくる。
1960年代当時、時代の最先端にあったジャズ。軍港である佐世保は、特にそのアメリカから来た最新音楽と親和性が高い街だ。薫は“不良”の千太郎を通してジャズと出合い、優等生として生きてきた自分を解放するように彼との演奏にのめりこむ。混血の孤児であり、孤独や偏見に抗いながら、言葉にならない思いをぶつけるようにドラムを叩いていた千太郎も、心の拠り所だったジャズで演奏を交わしあえたからこそ薫に心を開いていく。
二人の“恋にも似た友情”は、ピュアで不器用でまっすぐにしか走れない高校生ならでは。自身を追い詰めるほど暴力的な承認欲求が魂の双子とも言うべき相手を引き寄せ、傷つけ、再生していく姿は、今その時代を生きる若者はもちろん、60年代にその時代を駆け抜けたかつての若者にも見てもらいたい。親子で鑑賞すれば、年代を超えて語り合える共通の話題が、きっと一つ増えるはずだ。

【文/深海ワタル

「孤狼の血」

「タリ―と私の秘密の時間」

関連記事

  1. 『人間失格 太宰治と3人の女たち』

    太宰文学のミューズになるのは誰か? 彼を取り巻く女たちの狂気と愛情監督:蜷川実花配給:松竹、…

  2. 「孤狼の血」

    刑事と暴力団の歪な関係に隠された秘やかな正義監督:白石和彌原作:柚月裕子配給:東映(R1…

  3. 「関ヶ原」

    天下分け目の6時間が戦争の緊張と理不尽をあぶり出す 監督・脚本:原田眞人原作:司馬遼太郎…

  4. 「キツツキと雨」

    「キツツキと雨」

    木こりオヤジ、ゾンビ映画に出る監督:沖田修一配給:角川映画公開:2012年2月11日より全国ロ…

  5. 「カツベン!」

    サイレント映画からトーキーへ   進化する映画と弁士の気になる行方監督/脚本:周防正行脚本・…

  6. 「ビブリア古書堂の事件手帖」

    一冊の本と鎌倉の街がうつしだす 50年前の叶わぬ恋作品名: 監督:三島有…

  7. 「アゲイン」

    「甲子園」という人生の魔物監督・脚本:大森寿美男原作:重松清「アゲイン」 配給:東映 …

  8. 「探偵はBARにいる3」

    コメディ&ハードボイルドで綴る、或る女の壮絶人生監督:吉田照幸配給:東映公開:2017年…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。

最近の映画レビュー

PAGE TOP